「アナと雪の女王」<7点>

2014☆Brand new Movies

 

ついに“本性”を他者に知られてしまった女王が、失意の中走り出す。
港湾の海面を一歩ずつ凍らせて、雪の中にに消えていく。
とても悲しく、でもあまりに美しいこの序盤のシーンを観て、この映画は“アメージング!”その一言に尽きると思った。

物凄い興行成績を叩き出している大ヒットぶり自体は、明らかに大衆の過剰反応だと思えたので、必然的に超ロングラン公開を横目に結局劇場鑑賞は敬遠してしまった。
ただその流行ぶりはやはり物凄く、どれくらい凄いかというと、当然映画なんて観てもいない3歳の愛娘が、「ありの~ままで~♪」と歌い出すほど。
そんなわけで、愛娘に見せてあげたい気持ちも先行し、レンタルショップに走った次第。

大ヒットの要因は誰が観ても明らかで、一にも二にも音楽とビジュアルのクオリティーの高さだろう。
主題歌「Let it Go」は、その音楽性も、綴られるメッセージ性も含めて、名曲が溢れるディズニー映画史上においても屈指の名曲だと思える。
音楽とビジュアルでこれほどの満足感を世界中に与えられた時点で、その映画的な価値は揺るがないだろう。

一方で、描き出されるストーリー性も、クラシックストーリーの中に常に「時代」を映し出してきたディズニー映画らしく、新たな価値観が導き出されている。

個々人の「特性」をオープンにすることの難しさと、正しさ。
ディズニーの新たなマスターピースが描き出したストーリーのテーマは、恋物語でも姉妹愛でもなく、“固定観念からの脱却”そのものだったと思う。

お姫様が幸せになるために“王子のキス”なんて必要ではない。
この時代において必要なことは、自分と異なる他者を寛容することと、自分の運命は自分で決めるという意志だということを高らかに宣言しているように思えた。

そういうことをエモーショナルに描き出したこの映画は、ある部分においてとても“いびつ”でもある。
そもそも“悪役”あったはずの女王が、主人公として再構築されているのだから、それは必然的なことだろう。

個人的には、もっと女王が悪役に陥る淵まで描いても良かったとは思うし、ラストの顛末などはあまりに御都合主義だと思う。
「少しも寒くないわ」と氷の中に閉じこもろうとする女王の様は冷ややかではあるが、とても魅力的だった。
彼女が彼女らしく盲進する様をもうしばらく描いて、そこから彼女自身が妹を含めた他者を寛容する様を描き出してくれたなら、この映画はもっと感動的になったと思えなくもない。

ただし、そんなことは、ようやく作品自体も観た上で「ありの~ままで~♪」と得意気に歌う愛娘にはどうでもいいことだ。

 

「アナと雪の女王 Frozen」
2013年【米】
鑑賞環境:Blu-ray(字幕)
評価:7点

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