「南極料理人」

2012☆Brand new Movies

 

終始、南極越冬隊の生活感をゆるーいテンションで淡々と描いた映画で、その表面を覆ううすぼんやりとした感じが、中盤に退屈感を呼び起こしてしまったことは否めなかった。

しかし、そのうすぼんやり感は、あくまでこの映画の表面的なものに過ぎず、よくよくと思い返せば、そこには各人物の人生における葛藤や、極地生活で小さいながらも確実に生じる心の闇、そして張りつめた精神がふいに崩れる様などもきっちりと描かれている。

そうして任務を終え、日常生活に戻っていくラスト。このラストについても、あくまで淡々としており、やたらに盛り上げない感じが絶妙だった。
南極での任務期間中、意外に潤沢な食材をフルに生かして、生活環境の厳しさを少しでも忘れさそうとするかの如く、主人公は時に豪華で時に魅力的な食事を日々作っていく。
しかし、映画の中の南極での食事シーンでは、主人公が「ウマい」と発するシーンは一つもない。
それなのに、ラストシーンで家族で訪れた遊園地の明らかに不味そうなハンバーガーを口にするや否や思わず「ウマッ!」を発する。
「食事」という行為の本当の意味の醍醐味を如実に表した、この映画に相応しいラストシーンだったと思う。

冒頭に述べたように、映画として若干間延びをしてしまっている印象はある。南極観測基地という極端に閉鎖的な環境を生かして、もっとタイトにまとめて欲しかったとも思う。
芸達者な舞台出身俳優が揃っているので、このまま舞台化したなら、かなりの名舞台作品になる予感を持たずにいられない。

 

「南極料理人」
2009年【日】
鑑賞環境:BS
評価:7点

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