「何かラスボス的なこと言ってる?」
子どもをスーパーヒーローにしちゃあいかん。楽しすぎる。
個人的には「シャザム!」というスーパーヒーローの固有名詞すら聞き馴染みが無かったが、DCによるこの新たなアメコミ映画は、映画ファンにまた新しいエンターテイメント性と高揚感を与えてくれている。
DCはユニバース構築において、また一つ魅力的なコンテンツを生み出すことに成功したと思う。
子どもが大人になってしまうというファンタジーによって生まれるコメディ、成長譚を描いた作品は多々あり、この映画で紡ぎ出されるストーリーもベタではある。(玩具店のシーンでは「ビッグ」のオマージュもあり)
その“ベタ”が、スーパーヒーロー誕生の王道展開(こちらもベタベタ)と融合することで、メタ視線も加味され、ただただ楽しい映画世界が構築されている。
この「王道感」すなわちベタベタな展開を、奇をてらうことなく貫き通す映画的スタイルこそが、“DCエクステンデッド・ユニバース”の強みであり、大成功を収めたライバル“マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”に対抗するための唯一無二の魅力になっていると思う。
奇のてらわなさで言えば、DCのヒーローたちのコスチュームも“ある意味”魅力的だ。
MCUの各ヒーローたちのコスチュームを含めたビジュアルは、ある程度現実世界にフィットするように、コミックス登場時のビジュアルとは多少なりともスタイリッシュに格好良くデザインされていることが多い。
しかし、「王道」であるDCは違う。時代性もセンスの古さも関係なく、基本的にコミックス登場時のビジュアルのままヒーローたちは“堂々”と登場する。
その見た目の時代錯誤感に対して自虐的に突っ込む描写も、DCユニバースの“お決まり”となっており、「娯楽」に対する姿勢が潔い。
そして、時代錯誤なヒーローたちが現代社会における「悪」と苦闘を繰り広げるからこそ、文字通り時代を超越した高揚感が生まれているのだとも思う。
ただ一方で、ストーリーテリングの鈍重さは、相変わらずDCユニバース作品に共通するマイナス要素だなと思う。
今作も、性質的にライトな作品世界のわりに、テンポが悪く、その部分が爽快感の弊害になってしまっていることは否めない。132分という上映時間は明らかに長過ぎる。
まあ「ワンダーウーマン」や「ジャスティス・リーグ」などは、極めて無駄に近いその重々しさと仰々しさが転じて味わいとなり、圧倒的な娯楽性を生み出していたとは思うけれど。
ともあれ、あのスーパーマンと並ぶ「地上最強の男」とも称される愛すべき新ヒーロー(とそのファミリーたち)が参戦したことで、今後の展開が益々楽しみになったことは間違いない。
「シャザム! SHAZAM!」
2019年【アメリカ】
鑑賞環境:映画館(字幕)
評価:7点
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