「終わらない週末」“週末と終末の狭間で、今私たちは生活している”

2024☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

ロングアイランドでバカンスを過ごす家族のもとに、大停電が起きているという不可解なニュースを告げる見知らぬ夫婦が現れ旅行が台無しに。さらなる脅威が迫る中、2組の家族は、崩壊しつつあるこの世界で居場所を確保するために、起こりうる危機を乗り切る最善策を見つけなければならない…。 Filmarksより

『終わらない週末』予告編 - Netflix
穏やかな休暇が混沌へと一変するとき、信頼はもろくも崩れ去る。ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホーク、マイハラ、ケヴィン・ベーコン出演で贈る『終わらない週末』は、Netflixで12月8日 (金) より独占配信スタート。#L…more

 

Review

今世界は、疑心暗鬼に満ちている。
自分以外の“他者”が、いつ、いかなる理由で「攻撃」をしてくるか分からない時代。人々は常にビクつき、防衛本能をフル稼働せざるを得ない。
どうしてこんな世界になってしまったのか。国家レベルから、一個人レベルに至るまで、私たちは息を詰まらせて苦悩している。

或る家族が急に思い立ったバカンスを過ごすためロングアイランドの別荘地に向かうところから本作は始まる。当然のことながら、何の危機感も感じていない普通の家族が、突如として「異変」に放り込まれる。
この唐突さこそが、今この世界に孕む危機の本質なのだろう。
災害にしても、パンデミックにしても、戦争にしても、テロにしても、一般市民に対する実害は、何の前触れも無く突然降りかかる。無論、適切なタイミングなど計ってくれるわけもなく、休日だろうが、深夜だろうが、徹夜明けだろうが、私たちは、今この瞬間にも命の危機を突きつけられてもおかしくないのだ。

いずれにしても、いざそういう状態になってしまったとき、人間はどのような対応を迫られるのか、そしてどのような対応ができるのか。
本作に登場する二つの家族の人間たちはみな善人であり、恐怖に包まれパニックに陥りながらも、人間らしい言動に努めているけれど、それでも発言や行動の端々にその人の本質が表れる。

自分や家族を守るための虚偽や卑怯や暴力は、一体どこまでが罪なのだろうか。
終盤、“隣人”の恐怖を象徴するような存在としてケビン・ベーコンが登場するけれど、果たして彼の言動を誰が断罪できるだろうか。彼にも娘がいて、守るべき家族があるのだ。

私自身、家を持ち、守るべき家族がいるけれど、本作で描き出されたような「分断」が本当に起きてしまったとき、どのような思考で、どう行動できるのか。自分自身に対して、それこそ疑心暗鬼になってしまう。

恐怖の正体が見えないとても居心地の悪い映画世界は、冷戦時代に製作された数々のスリラー映画を彷彿とさせた。
それは冷戦時代に世界に蔓延していた危機感、焦燥感が、今現在の世界と社会に重なることを雄弁に物語っている。

平穏な「週末」が、世界の「終末」に直結するかもしれない只中で、今私たちは生活している。
本作が、何十年か後、「こんな時代もあったね」という教訓や思い出話と共に“発掘良品”的に鑑賞される日が訪れることを心から願う。

 

Information

タイトル 終わらない週末 LEAVE THE WORLD BEHIND
製作年 2023年
製作国 アメリカ
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 インターネット(字幕・Netflix)
評価 8点

 

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終わらない週末 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
のんびり週末を過ごそうと、豪華な別荘を借りた一家。だが到着早々、サイバー攻撃により携帯やパソコンが使えないという不測の事態が起こる。そして、玄関口に見知らぬ男女2人が姿を現す。

画像引用:https://www.nytimes.com/2023/12/07/movies/leave-the-world-behind-review.html

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