「シビル・ウォー アメリカ最後の日」“いろんなアメリカ人からのBサイドを観たい”

2024☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー Filmarksより

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ファイナル予告|10.4 [Fri.] 全国ロードショー
【2024年最大の問題作、遂に上陸】もし今、アメリカが分断され、内戦が起きたらーA24史上最大の製作費&2週連続全米1位を獲得した、ディストピア・アクション『シビル・ウォー アメリカ最後の日』2024年10月4日(金)公開公式HP:

 

Review

まず最初に印象的だったのは、本作の冒頭シーンである黒煙が立ち上るニューヨークの描写が、先日観たばかりのNetflix映画「終わらない週末」のラストシーンと地続きのように感じたことだ。
もちろん続編などではなく、プロダクション的な背景においてもまったく関係性はないのだろうけれど、そこにはアメリカ合衆国という大国が明確に孕んでいる“今そこにある危機”が、イメージの一致として表れていたのだと思う。
すなわち本作で描きつけられたかの大国における内戦の地獄絵図は、もはや絵空事でもなんでもなく、直面寸前の現実だということだろう。

そして、個人的には、昔よく読んだ村上龍の小説のいくつかの作品のことを鑑賞後に思い浮かべた。
「5分後の世界」や「半島を出よ」など、現実の社会情勢や国際関係を踏まえた上での戦乱を描き出した小説世界は、フィクションというよりも、今この世界が辿るかも知れなかったもう一つの「現実」という印象が強く、スリリングであり、拭い難い恐怖を感じたものだ。

小説家出身のアレックス・ガーランド監督によるこのアメリカ映画からも、同じようなスリリングと恐怖を覚える。
戦禍を追う報道カメラマンの目線から描かれる映画世界は、往年の戦争映画的な娯楽性を極力廃し、主人公の報道スタンス同様に極めてフラットな視点で、眼の前の事実として描きつけられていた。
現実と創作、その狭間に存在するリアリティラインを絶妙な塩梅で引いて、その境界線上をカメラを持ってシビアに渡るような、まさに「現在」の戦争映画だったと思う。

その現実に対する“リアリティライン”の線の引き方こそ、アレックス・ガーランド監督をはじめとする本作の製作陣がもっとも苦慮し、熟慮を重ねたであろうポイントだったのだと思う。
今この瞬間の「現実」に対して、フィクションの境界を可能な限りぼかすために、本作で描き出される世界の「詳細」も意図的にぼかされている。
アメリカ合衆国全土において“内戦”状態であることは伝わるが、事の発端が何なのか、どのような立場の陣営がどのようなイデオロギーの元で対立し殺し合っているのか、勃発からどれくらいの時間が経過しているのか、そういうことの一切は明確にされない。

この“ぼかし”によって、この映画を鑑賞した“アメリカ人”に向けて、現在進行形で直面しているあらゆる種類の対立や二分化、すでに顕在化している“暴力”が、この地獄絵図に直結していることを、切実な未来像として想像しやすくしようとしているのだろう。

ただ一方で、その“ぼかし”が、映画的な「説得力」の欠如に繋がってしまっていることも否めなかった。
特に我々“外国人”からすると、敢えて描き出されなかった内戦の背景こそが、この映画世界をより現実的に、立体的に見せるための要素となったのではないかとも思える。
良くも悪くも世界を牽引するアメリカ合衆国があのような崩壊状態になってしまい、それによって世界的な情勢やパワーバランスはどのようになっているのか、日本をはじめとする関係各国はどのように関わっているのか。
そのあたりがまったく触れられなかったことで、本作の映画世界全体がどこか寓話的に捉えられてしまい、対岸の火事のように見えてしまったことは否定できない。

無論、本作の「視点」が、必ずしもアメリカ合衆国内のみの「危機」を捉えているものではないことは理解できる。同様の内戦や内乱は、現在の世界のどの国でもあり得ることだろう。
だからこそ、より具体的に実像化された一つの「事例」すなわちマルチバースとして、具現化された世界を見せてもよかったのではないかと思う。

とはいえ、そんな苦言は個人的な娯楽に対する趣向に過ぎない。本作が今描き出されるべき新たな戦争映画であることは紛れもない事実であり、その価値はとても大きい。

また、本作のストーリーテリングは、ある報道カメラマングループの一視点に徹底されているが、他の立場や、境遇からの視点も観てみたい。
ジェシー・プレモンス演じる恐ろしい軍人の台詞に象徴されるように、“どんなアメリカ人”かによって、この映画世界の「視界」は大いに様変わりすることだろう。
この軍人の視点や、従軍記者の視点、そしてホワイトハウス側の視点など、多様な“Bサイド”を描き出すことも可能だろう。そうすることで、不足に感じた立体感が生まれてくるようにも思う。

 

Information

タイトル シビル・ウォー アメリカ最後の日 CIVIL WAR
製作年 2024年
製作国 アメリカ/イギリス
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館(字幕)
評価 8点

 

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