暴力の境界

一スポーツファンとして、やはり言及しておかなければなるまい。

というかそうしないと気が済まない。

女子柔道日本代表監督の“暴力問題”。

マスコミは、先だっての高校の体罰問題と安直に一括りにし、

ここぞとばかりに相変わらずの馬鹿騒ぎをして、

問題の本質を突き詰めぬまま、監督の引責辞任という性急な結末を導いた。

結果として、監督の辞任は致し方ないことだとは思う。

ただし、この問題の本質は、決して彼一人の“過ち”に収まるものではない。

柔道という一つの競技に限らず、様々なカテゴリーと種別のスポーツ界において、

長い長い年月に渡り同様の事象は常態化していたはずだ。

「常態化」していたのは、何もそのスポーツに直接関わっている人ばかりではない。

自分自身も含め、スポーツを観るすべての人々、ひいてはこの社会全体が、

指導における体罰的な某が場合によってはあるのだろうということを、黙認していたと思う。

スポ根漫画の中の鬼コーチが、主人公に平手打ちを食らわすシーンがあったとしても、

それをショッキングに感じる人はほとんどいないだろう。

そういうことが「是」と言いたいわけではない。悪しき慣習であることは間違いない。

しかし、時代の移り変わりとともに物事がよりオープンになり、

今まで慣習としてまかり通っていたことが「非」となるのならば、

その処罰の対象を人間一人に集中してしまってはならないと思う。

指導者も選手も含めたその競技全体、そして社会全体が反省すべきことだと思う。

そうあるべきなのに、あたかも責任転嫁のように皆綺麗事ばかりを並べ、

「そんなことがあったなんて信じられない」などという態度をとる輩には辟易とする。

流される映像ではまるで犯罪者でも映し出しているかのように当事者周辺を過剰にぼかし、

一人の人間の人生の瀬戸際を面白気に騒ぎ立てる。まったく反吐が出そうだ。

彼の周辺に映っている人たちも同じ柔道界の人間なのだから、映り込むことに何の問題があるのかと思ってしまう。

過ちをおかしてしまった監督は、責任をとって辞任し、またゼロから指導者の道を進んでいってくれればそれでいい。

しかし、今回の問題をこれで終わりとするのならば、

柔道界のみならず、この国のスポーツ界の未来はあまりに寂しい。

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