一応明記は避けるが、僕は自分の名前が結構好きである。
小学生の低学年頃は、平仮名にするとなんとなく愚鈍な響きを覚えてあまり好きではなかった。
思い返すと、その頃は名字の方も平凡な印象を感じて気に入らなかった覚えがある。
が、今はまあ名字はどうでもいいが、名前の方はかなり気に入っている。
漢字一文字のところも、昔は愚鈍と感じた響きが今はなんとなくグローバルな感じがするところも、大抵の場合すんなりと読まれないところも、好きである。
でも、最近少々気に入らないことがある。
長年において、僕は自分の名前に対して「特別感」を覚えていた。
まわりに自分と同じ名前の人はまずいないし、曖昧な言い方で申し訳ないが、“あの字”で“ああ読む”名前の人なんて日本で自分一人だろうと本気で思っていた。
しかしその「幻想」は突如として崩される。
某早食いチャンピオンの名前の漢字と読みがまったく同じだったのだ。
しかも彼は僕より年上だった。なんだか自分が“真似”をしたようで、なんとなくショックだった。
同じ名前の人など世の中にはいくらでも存在することが普通なのだから、ショックを受ける必要などないのだが、自分の名前を特別視していた僕にとっては拭えないものがあったのだ。
素養が何であれ、彼が有名人であることも、なんだか悔しかった。
そして今日、読みたかった小説を古本屋で見つけ喜んでいたら、その作者の名前がまたもや同じ漢字と読みだった。当然ながら年上。
しかも今度は気鋭の作家。早食いチャンピオンとはまた別段の悔しさを覚えた。
こうなれば、自分が特別になるしかない。と、少々本気で思ったりする。
普段は、あまり意識しないのだが、時折、自分は自尊心が物凄く強いと思う。
(ああ、それでその字なのか……。)
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