日本の陸上競技史上最強のアスリートは、室伏広治だと7年前から認識していた。
世界陸上での2度のメダル獲得(銀・銅)、そして7年前のアテネ五輪の金メダル獲得。
どの種目においても、世界の“壁”がそびえ立つ陸上競技界の中で、
彼ほど世界大会での実績を得ているアスリートは、日本にはおらず、彼が“最強”であることは明らかだ。
その日本最強のアスリートが、世界陸上で初の金メダルを獲得した。
“最強”と言えど、36歳になった彼が成したことは、輝くメダル以上にもの凄い価値を併せ持っている。
落ち着き払った決勝での6投は、“最強”なんて俗っぽい呼称を超えて、精神を支配した“鉄人”、いや“哲人”の様だった。
日本人のスポーツファンとして、何より嬉しかったのは、
室伏広治が闘いを終えたその競技場で「勝利」に対する喜びを表し、ウィニングランを果たしたこと。
アテネ五輪の金メダル獲得は、紛れもなく彼がナンバー1であることを証明した結果だが、
他選手のドーピング発覚による繰り上げであったため、彼が喜びを爆発させる姿を見ていない。
数々の実績を成し遂げてきた室伏広治だが、
世界の本当の「最強」を争う大会で、完全な勝利を得た喜びを見せたことはなかった。
終始冷静に競技に挑み、自身の最高のパフォーマンスを見せた彼が、初めて喜びに弾んだ。
シーズンベストを連発した投てき自体よりも、勝利の後に見せたその姿こそが、ファンにとって最も喜ぶべきシーンだった。
素晴らしい。

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