感覚の価値

交差点を信じられないスピードで疾走する自転車を見た。

思わず、「ナガキ先輩かッ!」とひとり突っ込んでしまった。

なんのことか分からないだろう。

高校時代、自転車通学をしていたのだが、同じ方面から通学する一つ上の先輩に、ナガキ先輩という人がいた。

先輩と言っても、僕はバレー部で、その人はボート部だったので、直接話したことは無かった。

ただ、通学時の自転車のスピードが、異様に速かった。

立ち漕ぎをするなどあからさまに急いでいる風はまるでなく、自転車自体もごく普通の通学用のモノだった。

普通にサドルに座って自転車を漕いでいる。

なのに、ただただ圧倒的に速かった。

時々、密かに対抗して、勝負を挑んだ。

が、一時的に追いつくものの、そのスピードを持続することは出来なかった。

実はオリンピック選手も輩出しているボート部の足腰の強さを見せつけられていた。

思い返せば、自転車通学も懐かしい。

10km近い道のりを、毎日毎日よく通ったものだと思う。今考えると、ちょっと有り得ない。

片道40分くらいはかかっていたと思う。

大概の場合、通学路では音楽を聴いていた。

好きなアーティストを中心に、流行りの曲を聴いていたと思うが、

真っ先に思いつくのは、やはりCoccoだと思う。

「文化」に通ずるあらゆるものに興味を持ち続け、それはこの先も一生続くと思う。

ただ、高校時代に触れたそれらは、殊更に自分の人生において影響力が強かったと思う。

映画で言えば、岩井俊二であり、リュック・ベッソン。

小説で言えば、村上龍であり、よしもとばなな。

漫画で言えば、手塚治虫であり、岩明均。

そして、音楽で言えば、Coccoだったろうと思う。

人生を経ていく中で、“ナンバーワン”は変わりゆく。

けれど、あの日あの時、それらに触れた「感覚」の価値は、たぶん一生揺るがない。

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