数年前、自分自身の結婚式を控えた頃、YouTubeで結婚式のスピーチ関連の動画を検索していて、何処かの誰かの結婚式での花嫁の親友らしい女性のお決まりのテンションのスピーチ動画に、妻共々笑ってしまった。
映画の中で登場する、花嫁の親友同士の“スピーチ合戦”は、そういった結婚式における“女の友情あるある”を彷彿とさせ、笑いが止まらない。
商売には失敗し、恋愛偏差値は下がる一方の“いきおくれ”の主人公が、幼馴染みの親友の花嫁介添人のまとめ役をまかされたことにより、益々精神不安が加速していく。
男性が主人公のこの手の“イタさ”と“下ネタ”オンパレードの極めて“アメリカ的”なコメディ青春映画は多々あるけれど、女性が主人公でここまでぶっ飛んでいる映画はあまりない。
それ故に、男性目線からだと特に、時にえげつくなく、時に際限なく下品ではあったけれど、好事家たちの評判に違わず、サイコーに愉快で、サイコーにキュートな映画だったと思う。
映画としての上手さは、主人公が相手とする男性によって醸し出す雰囲気の違いに表れていた。
イケメンで金持ちの男との不毛なセックスを繰り返す主人公は、体裁こそクールに装ってはいるけれど、非常に愚かしく無様に見える。
一方、何の変哲も無い通りすがりの警察官の男とのシーンでは、滑稽過ぎる程に気取りのない言動を取るのだけれど、自然体でとてもキュートに見える。
観客は一目で、どちらの姿が主人公にとって相応しく、彼女が目指すべき「幸福」に近いのかが分かる。
また、このストーリーは決して主人公一人の葛藤を描いているだけではないというところも、上手いと思う。
花嫁の親友たちで構成された5人の花嫁介添人たち(ブライズメイズ)。花嫁自身も含め、立場も生活環境も違う6人の女たちそれぞれが抱える葛藤を、遠慮のないコメディ描写の中でしっかりと描き出し、最終的には6人全員が好きになってくる。
男性として、女性の友情にはどうしても懐疑的な部分があるのだけれど、この映画を観ると、男同士のそれには無いドギツさとコワさを感じる一方で、女同士の友情に初めて羨ましさを覚えた。
今作の脚本は主演を務めたクリステン・ウィグが担っているということで、また一人才能豊かな映画人が現れたと思う。
とにもかくにも、それぞれがそれぞれに個性的でパワフルな女性が6人も集えば、周辺の男性陣はただただ右往左往するしか無いわけで。観客の男もその一人として、ただ笑い続けるしか無い。
結婚式を控える女性、結婚式を終えた女性、そして特に結婚式の予定なんてない女性、面と向かって勧める勇気はないけれど、そういったすべての女性のための映画だと思う。
この映画は、明らかに相性が悪いのであろう男との爆笑必至のセックスシーンから始まる。
この“笑撃”的なファーストシーンは、主人公が陥っている状況を端的に表すとともに、この映画の“振り切れ具合”を潔く表していた。
それは「この映画、こんなカンジて突っ走るよ?ついてきてね」と観客に対してのある種の宣戦布告だったのかもしれない。
「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン Bridesmaids」
2011年【米】
鑑賞環境:DVD(字幕)
評価:8点
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