
巨大な熊と熊がぶつかり合うクライマックス。場合によりゃ最高に盛り上がるポイントに見えるのかもしれないが、ストーリーの流れを踏まえると、「自分は一体何を見ているのだろう?」と理解不能な異次元に放り出されたような気分になった。
この映画には、全編通してそういったどうしても“違和感”にしか感じられないストーリーテリングが羅列されていて、ファンタジーという言葉だけでは到底説明がつかない世界観に、面食らうというよりも肩透かしを食らってしまった。
もちろんこの映画が、無名のアニメーションスタジオで制作された作品だったならば、映し出される映像世界の秀麗さだけを捉えて、手放しで賞賛することもできよう。
しかし、これが「ピクサー」の映画である以上、そういうわけにはいかない。
往々にしてよくあることではなるが、日本国内のプロモーションの根本的な方向性が、実際の映画の内容とあまりに合致していないということは、鑑賞者の評価に大いに影響を与えてしまっていると思う。
観賞後にトレーラーを見ると、本編のテーマとの本質的な相違に呆れてしまった。
ただ、国内の関係者がこのようなプロモーションをしてしまったこともある部分では理解出来る。
武に秀でた姫、馬上から放たれる弓矢、森の精霊、暴走する野生……、この映画の彩る要素の数々のモチーフは、間違いなく「もののけ姫」であり、それはもはや表面的には模倣に近い。
ピクサーが新たに描き出した映画世界には、人間と自然との対峙における大スペクタクルが繰り広げられるに違いない。と、無闇矢鱈に「期待」してしまうことは、“日本人”としてある意味仕方のないことかもしれない。
が、この映画が描くテーマは、そもそもそのような大スペクタクルなどではないのだ。
終始中心にあるものは、母と娘のあまりに普遍的でこじんまりとした物語だ。だから、「思ってたのと違う」と大多数の人が感じることも当然だ。
しかし、鑑賞前に「思ってたのと違う」映画世界を見せつけられても、結果的に「面白い!」と感じる映画は山のようにある。残念ながらこの映画は、そういう映画にはなり得ていない。
描こうとしているものは母娘の普遍的な物語なのだろうが、それに対してのストーリーの“考え方”自体が、あまりに稚拙である部分では明らかに破綻してしまっている。
主人公をはじめ、キャラクターの言動に深みもなければ説得力もなく、なぜそういう結論に至るのかという疑問符が消えることが無い。
「ピクサー」が作り出すアニメーション映画が、「世界最高」と賞賛される最大の理由は、必ずしも最新技術による秀麗な映像世界のみではないはずだ。
そういった世界最高峰の映像技術に彩られた、文字通り世界中の老若男女が心から楽しみ感銘を受けることが出来る卓越したストーリーテリングこそが、最大の理由であったはずだと思う。
次作での巻き返しに是が非でも期待したい。
「メリダとおそろしの森 Brave」
2012年【米】
鑑賞環境:Blu-ray(字幕)
評価:5点

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