「ブラック・スワン」

2011☆Brand new Movies

 

“バレリーナ”という人種をカテゴライズするならば、「芸術家」と「アスリート」どちらが適切か?
「バレエ」というものをまともに観たことは無いが、それに関する物語や、実在のバレリーナのドキュメンタリーを見る度に、そのカテゴライズに戸惑う。
一流のスポーツシーンを観たときに感じる芸術性を踏まえれば、「バレエ」という表現は、「芸術」と「スポーツ」それぞれの究極が重なり合う領域に存在するものなのだろうと思う。

そして、「芸術」と「スポーツ」その両方を愛するからこそ敢えて言いたい。“両者”が行き着く先は、果てしない「自己満足」の世界だということを。
詰まりは、「バレエ」という“表現”の到達点は、究極の「自己満足」であり、「自己陶酔」だ。

だからこそ、その「究極」を追い求める過程において、精神世界の屈折、そして自我の崩壊は、往々にして避けられない。
そういうことこそが、この“異質”な映画が描き出す本質だろうと思う。

ひたすらに純粋で無垢な欲望を追い求める主人公の望みが叶った瞬間、自らが抱える闇が蠢き始める。

そこには、芸術と肉体が融合した「バレエ」という表現の特異性と、バレリーナという生き方における破滅的な精神世界が入り交じり、言葉にし難い「混沌」が映し出される。

究極の「完璧」を追い求め、次第に“崩壊”していく主人公。
自分を取り巻くすべてのものを傷つけ、嘆き、その“ダメージ”がすべて自らに向けられたものだと知った時、彼女が見たものは何だったのか。

とても、色々な捉え方が出来る映画だと思う。
目が離せないシーン、とても観ていられないシーン、それぞれが連続して波打つように展開する。決して心地の良い映画ではない。
ただ、振り返ると、様々なシーンが脳裏に浮かんでは消え、その時々の主人公の心情に思いを巡らしていることに気づく。

「どういうジャンルの映画か?」と問われると、返答に非常に困る作品であるが、観る者それぞれの心理に直接訴えかけるような“一筋縄ではいかない”映画であることは間違いない。

儚さ、脆さ、危うさ、愚かしさ、そして悍ましいまでの恐ろしさ。それらすべてを包括した主演女優の美しさに圧倒された。

思い返させば、実家の自室には、”マチルダ”が小脇にぬいぐるみを抱えて銃身を向けるブロマイドを飾っていた。
「レオン」から16年、よくもまあ凄い女優に成ったと思う。素晴らしい。

P.S.地味な出演だったけど、ウィノナ・ライダーのイタい演技も良かったよ。ほんとに。

 

「ブラック・スワン Black Swan」
2010年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:9点

コメント

  1. soramove より:

    映画「ブラック・スワン」ナタリー・ポートマンという女優の成長とシンクロする傑作!

    「ブラック・スワン」★★★★★満点
    ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、
    ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、
    ウィノナ・ライダー出演
    ダーレン・アロノフスキー監督、
    110分 、2011年5月11日公開
    2010,20世紀フォックス映画
    (原作:原題:BLACK SWAN)
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    ナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を獲得した作品
    「バレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)の目標は
    バレエ団のプリマになること、
    そのために母娘で厳しいトレーニングと
    毎日の節制を課して努力を続けてきた、
    芸術監督に君が第一候補と告げられるが
    役の重圧とライバル出現の不安から
    次第に精神のバランスを崩してしまう。
    まさに女優なら演じたい難しい役を演じ切った
    ナタリー・ポートマンの主演女優賞受賞作品」
    自分の人生をかけた夢が実現しそうだ、
    監督は君は完璧だと絶賛する
    しかし彼女の資質と正反対の
    黒鳥さえ演じ切れば
    次の主役は君だと告げられる。
    演技に感情を込める、
    舞台の演技なら表情や声に出せそうだ、
    けれどバレエの踊りとなると
    正確なターンを何度繰り返しても
    それではダメだと監督の激が飛ぶ
    どうしたら良いのか
    内面からの感情を演技に変えるのは
    どうしたらいいのか。
    これでは役を取られてしまう、
    不安な気持ちでいるところへ
    自分が果たせなかった思いを娘に託した母の
    偏執的な溺愛ぶりも
    彼女の心をがんじがらめにして
    彼女自身虚実入り混じった幻想世界に
    足を踏み入れ
    何が現実が何が幻なのか
    区別が曖昧になっていく。
    このあたりのニナの表情は
    言葉で語る以上にこちらを納得させる、
    彼女ほど何かに打ち込んだことはないが
    その渇望と不安はこちらに伝染する。
    凄い演技、
    言葉が出ない。
    そしてラストの黒鳥のバレエ、
    登場した時からこれまでと全く違う表情、
    そして正確無比なターンの連続
    彼女は心技体まさにひとつの完璧な極みに到達する、
    その演出に圧倒されつつ
    なんだか涙が出てくる
    ここまでの狂気、そしてここまでさせる無垢な心。
    これってハッピーエンドなんだよね、
    思わず「ほーっ」と息を吐く、
    110分…

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