「アストロノーツ・ファーマー/庭から昇ったロケット雲」

2008☆Brand new Movies

 

志半ばで退役し、農夫となった元宇宙飛行士が、自ら作り上げた“ロケット”で宇宙への夢を追い続ける物語。

まったく。こういう映画を見過ごしそうになるから、おそろしい。

農場の納屋でコツコツと作ったお手製ロケットで、単身宇宙へ飛び立つ。
ストーリー自体はあまりに荒唐無稽で、現実味はないかもしれない。
ただ、観点を変えれば、「映画が荒唐無稽で何が悪い」ということ。

愛すべき家族に支えられ、自分の夢を実現させていく主人公の様は、決して人間として完璧で、力強いというわけではないのだけれど、観る者に正真正銘の「勇気」を与えてくれる。

この作品は、必ずしも「夢」に対する綺麗ごとばかりを描き連ねてはいない。
父親の自殺という過去、権力の妨害、金銭的な障壁、家族間での確執……、多くの人が人生の局面で味わう苦渋をしっかりと描いている。

ただし、その代わりに、「美しいもの」はきっちり美しく描いている。

冒頭のシーンから一貫して、丁寧に美しく映し出される「空」がそれを如実に物語っていると思う。
「空」は、宇宙を夢見る主人公にとって、常に目線の先にあるものだ。
その広大さ、美しさ、をワンカット、ワンカットで描き出す素晴らしさ。それを見た瞬間に、「ああ、これは良い映画だ」と感じた。

クライマックス、再挑戦のロケットが空高くのぼっていく。
それをすべての人たちが、喜びと、興奮で仰ぎ見る。

僕は、感動して、涙が出た。それ以上に何が必要か。

「アストロノーツ・ファーマー/庭から昇ったロケット雲 The Astronaut Farmer」
2007年【米】
鑑賞環境:DVD
評価:9点

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