梅雨に入ったばかりだというのに、仰向けに望んだ空は青々と広がっていた。青空は眩しく、自分の焦点があっているのかどうか定かではなかったが、視界の隅に見つけた月の輪郭で確かめることができた。
昨夜はとうとう一睡もできなかった。できなかったというよりも、夜明け前にして眠れない状況を打開すべく、翌晩まで起きていようと決めていた。午前中は乗り切れたが、午後になって流石に睡魔に襲われた。何もすることがなかったので、古本屋と本屋を数軒廻った後に自宅から車で10分ほどの浜辺に来ていた。車の中で1時間ほど眠ったが、6月の日差しにじわりと起こされた。眠気は覚めていなかったけど、とりあえず車外に出てみることにした。日差しは強かったが、吹き抜ける海風は心地よく車内よりよっぽど涼しかった。
50メートル程の間隔で設置されているベンチの一つに腰掛け、海を眺めた。夕日にはまだ時間がある日差しに包まれた瀬戸内の海は美しかったが、好きな夏の開放感はまだ無かった。
激しいほどの眠気のせいもあるが、今日は一段と無気力だった。何もやる気が起きない。何かを考えようとしても思考がまとまらない…いや考えること自体を無意識に拒否しているようだ。その自分自身の状況が尚更に無気力感を助長している。「まったく、何がしたいのか?」もう何十回も繰り返されている質問にまた自答を求めている。
両耳のイヤホンからは、Coccoの歌声が聞こえている。しかし歌詞の内容はほとんど頭に入ってこない。何曲か触りを聴いた後停止ボタンを押し、ベンチに仰向けになって遥かに広がる青空をしばらくの間、眺めた。
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