「犬王」映画レビュー “作品内外で奏でられる二人の共鳴”

スバラシネマReview

評価: 8点

Story

室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。「ここから始まるんだ俺たちは!」壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。 Filmarksより

劇場アニメーション『犬王』本予告(60秒) 5月28日(土)全国ロードショー!
《ヴェネチア国際映画祭》オリゾンティ・コンペティション部門選出!《トロント国際映画祭》スペシャル・プレゼンテーション部門選出!声の出演:アヴちゃん×森山未來!監督・湯浅政明×キャラクター原案・松本大洋×脚本・野木亜紀子×音楽・大友良英が実在の能楽師を変幻自在のイマジネーションで描く《ミュージカル・アニメーション》...

 

Review

時代と怨念を超えた語られぬ者たちの狂騒曲。
この国が誇る最古の舞台芸術である「能楽(猿楽)」をメインフィールドにして、時代に埋もれた能楽師と名も無き琵琶法師の友情と美学と狂気が、縦横無尽のアニメーション表現の中で描きつけられている。

まあ何と言っても、湯浅政明による変幻自在のアニメーション世界の中で、松本大洋が描き出したキャラクターたちが、自由闊達に舞い、歌い、乱れる様が凄い。
この二人のコラボレーションといえば、「ピンポン THE ANIMATION」が記憶に鮮烈に刻まれているが、本作においても、松本大洋の独特な描線で生み出されたキャラクターたちを、その性質を損なうことなく躍動させることにおいて、湯浅政明のクリエイティブは極めて的確で、文字通り“息を吹き込む”ことに成功している。

原作小説は別にあるようだが、時代に対する反逆心溢れる二人の主人公が、己の美学とアイデンティティを証明するために共鳴する様は、過去の松本大洋原作漫画に共通するモチーフだった。「ピンポン」の“ペコ”と“スマイル”しかり、「鉄コン筋クリート」の“クロ”と“シロ”しかり。
そういう点でも、この原作のキャラクター創造を松本大洋が担ったことはとても的確だったと思える。

 

“平家物語×ロックフェスティバル”とでも言うべきミュージカルアニメーションの映像世界はイマジネーションに溢れる。
時代や文化、人々の感性をも超越して混じり合ったその世界観が、独創的な「芸術」を生み出していることは間違いない。

が、しかし、その一方でエンターテイメントとしてやや“独りよがり”になってしまっている部分もなくはない。
室町の京都で“ロック”が奏でられる事自体は斬新だけれど、我々現代人にとってそれはあまりにも普遍的な音楽なわけで、その描写そのものを「肝」とするには物語の推進力としてやや弱さを感じてしまった。琵琶法師の主人公が路上バンドよろしく大衆を煽る様が延々と繰り広げられるシーン等、冗長に感じてしまったことは否めない。

本作にとって音楽描写は「主題」というべきもので不可欠なものだけれど、作品全体のストーリーテリングの中で、用いるポイントをもっと絞ってよかったのではないかと思う。
代わりに、主人公たちをはじめとするキャラクターたちの心理描写をもっとディープに掘り下げた方が、音楽描写によるエモーショナルが更に高まったのではないかと思える。
そういうことを踏まえると、叶うことならば、松本大洋による漫画化作品も読んでみたくなる。

とはいえ、「異形」そのものの姿形で生まれ落ちた“犬王”を禍々しさと愛着を併せ持つキャラクターとしてクリエイトし、時代を超えた「音楽」の中で舞い踊らせ、作品内外の“観客”を魅了したことは、「見事」の一言に尽きる。

 

スバラシネマex.「ピンポン THE ANIMATION」“時代と五輪を越えて益々深まるエモーション”
松本大洋の原作漫画はもちろん大傑作であり、数多のスポーツ漫画の中でも五指に入る名作だと思っている。 ただ、この湯浅政明監督によるアニメ化作品も本当に素晴らしくて、いくつかの要素においては確実に原作を超えていると思う。
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2006年の年の瀬。実はもっとも観たかった映画が、この「鉄コン筋クリート」。 年末公開だったのだが、地方都市の性で年明け一発目の公開とずれ込んでしまった。 というわけで、2007年一発目。新年最初に観る映画がアニメという…more

 

Information

タイトル犬王
製作年2021年
製作国日本
監督
湯浅政明
脚本
野木亜紀子
キャラクター原案
松本大洋
声の出演
アヴちゃん
森山未來
柄本佑
津田健次郎
松重豊
片山九郎右衛門
谷本健吾
坂口貴信
川口晃平
石田剛太
鑑賞環境映画館
評価8点

 

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画像引用:https://youtu.be/1aWljU6ZDKU

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