評価:
9点Story
ラジオ英語講座との出会いが未来を切り開いていく。昭和から平成そして令和へ。安子、るい、ひなたと、三世代の女性たちが紡ぐ100年のファミリーストーリー。 Filmarksより
YouTube作成した動画を友だち、家族、世界中の人たちと共有
Review
「100年の物語」とイントロダクションで明示されていた“本当の意味”を、僕はこのドラマの最終盤に至るまで実は理解していなかったのかもしれない。
一口に「100年」と言うのはあまりに簡単だけれど、その年月を通じて紡ぎ出されたひとつの「家族」の物語がなんと芳醇なものかと、怒涛の最終週で思い知った。
すべての人間の、すべての人生は、決して一筋縄ではいかない。
思い通りになどならないし、大なり小なりの悔いは常に付き纏うものだろう。
なぜあのときああ言ってしまったのだろう。なぜあのときこうしなかったのだろう。
過ぎ去った時間は無情で、戻ることはない。
けれど、一方で時間は、ほつれて固まった糸を解きほぐすように、ゆっくりと、確実に、人の心を和らげる。
この“100年”のドラマは、時代を越えて、また3人のヒロインの人生を越えて、幾つもの「言葉」や「行動」や「物」や「場面」が繰り返し、反復するように描き出された。
自転車の練習、夏祭りの風鈴、映画デート、時代劇スターの決め台詞……etc
そしてその「反復」の象徴として存在していたものが、「ラジオ英語講座」だった。
ただ一回の放送を聴いただけではほぼ意味を成さないけれど、何回も何日も何年も長い時間の中で繰り返されることで初めて真価を発する教材であり、文化であるラジオ英語講座は、まさにこのドラマを表すテーマそのものだった。と、最終回まで観終えた今、初めて気づく。
そしてそのテーマ性は、“朝ドラ”というこの国の特異なエンターテイメントの形態とも重なり、メタ的で、多層的な構造を成していたと思う。
ドラマにおける「反復」は、ある時はまったく新しい意味を与え、ある時は過ぎ去った時間を取り戻すかのように、登場人物たちの様々な人生の場面で“救い”となっていく。
かつて言えなかった言葉も、伝わらなかった思いも、果たせなかった夢も、累々とした時間の中で実はちゃんと繋がっていて、もしかするとその機会は、また自分の元へ戻ってくるかもしれない。
60年前の戦争で亡くなってしまっていて、面識もなければ存在すら知らなかった祖父の思いと言葉が、意図せず受け継がれ、孫娘の口から発せられるという人生の不思議。
それはとてもドラマティックで奇跡的なことのようにも見えるけれど、すべての市井の人々に共通する“営み”の帰着だと思えた。
悼みを抱え、苦しさを抱え、悔しさを抱え、それでも一生懸命に喜びを求め、「今」より更に生き続けるからこそ、「ひなたの道」は開ける。
それは、実のところ「時代」なんて関係なく、「今」を生きるすべての人たちに向けたメッセージだ。
そう、本作のイントロダクションにも添えられている通り、「これは、すべての『私』の物語。」だった。
巡りめぐった物語のその帰着に、只々感嘆とした。
3人のヒロインそれぞれの人生に対して語りきれぬ思いがあると同時に、彼女たち以外のすべての登場人物たち、そして登場すらしていない人物たちにも、当然のごとく語りきれぬ人生模様があるということに気づいたとき、この朝ドラが「100年の物語」と銘打った本当の意味が腹に落ちた。
Information
タイトル | カムカムエヴリバディ |
製作年(放映期間) | 2021年11月〜2022年4月 |
製作国 | 日本 |
演出 | 安達もじり |
橋爪紳一朗 | |
深川貴志 | |
松岡一史 | |
二見大輔 | |
泉並敬眞 | |
石川慎一郎 | |
脚本 | 藤本有紀 |
撮影 | |
出演 | 上白石萌音 |
深津絵里 | |
川栄李奈 | |
濱田岳 | |
松村北斗 | |
村上虹郎 | |
本郷奏多 | |
小野花梨 | |
市川実日子 | |
三浦透子 | |
新川優愛 | |
前野朋哉 | |
堀部圭亮 | |
徳永ゆうき | |
青木柚 | |
岡田結実 | |
安達祐実 | |
尾上菊之助 | |
世良公則 | |
大和田伸也 | |
鷲尾真知子 | |
村田雄浩 | |
濱田マリ | |
松重豊 | |
オダギリジョー | |
YOU | |
西田尚美 | |
甲本雅裕 | |
段田安則 | |
村雨辰剛 | |
早乙女太一 | |
近藤芳正 | |
佐々木希 | |
おいでやす小田 | |
松原智恵子 | |
新津ちせ | |
平埜生成 | |
目黒祐樹 | |
多岐川裕美 | |
森山良子 | |
鑑賞環境 | TV |
評価 | 9点 |
Recommended
画像引用:https://www.nhk.or.jp/comecome/
コメント