評価:
8点Story
夏休みのある日。のび太が拾った小さなロケットの中から、手のひらサイズの宇宙人・パピがあらわれる!彼は、宇宙のかなたにある小さな星・ピリカ星の大統領で、反乱軍から逃れるために地球にやってきたという。最初はパピのあまりの小ささに戸惑うドラえもんたちだったが、ひみつ道具‟スモールライト“で自分たちも小さくなって一緒に遊ぶうち、次第に仲良くなっていく。ところが、パピを追って地球にやってきたクジラ型の宇宙戦艦が、パピをとらえるためにドラえもんやのび太たちを攻撃。みんなを巻き込んでしまったことに責任を感じたパピは、ひとり反乱軍に立ち向かおうとするが……。 大切な友だちと、その故郷を守るため、ドラえもんたちはピリカ星へと出発する!! Filmarksより
YouTube作成した動画を友だち、家族、世界中の人たちと共有
Review
「2021」という“未来”に蘇った「宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」。
オリジナル版の公開から36年余りという年月を経て、新時代の子どもたちに向けてリメイクされた本作は、稀代のSF漫画家による普遍的なジュブナイルと、“Sukoshi Fushigi”な空想科学の魂に満ち溢れていた。
オリジナル公開当時3〜4歳だった自分は、その時代から「ドラえもん」を愛し続け、今現在に至る。
食い入るようにスクリーンを見つめる我が子らと並んで観ながら、思わず目柱が熱くなったことは言うまでもない。
リメイクに当たって、キャラクター設定の追加やチューンナップ、ストーリー上の幾つかの改変ポイントはあったが、ストーリーテリングは概ねオリジナル作品に忠実で、改変による破綻や違和感は殆ど無かったと思う。
敢えて重箱の隅をつつくとすれば、冒頭の展開がやや駆け足だったため、ピリカ星の少年パピが10歳にして大統領であるというサプライズが薄れてしまっていたり、のび太たちが取り組んでいる特撮映画制作のくだりがほぼオープニングのみで処理されてしまうので、前フリとして弱く、中盤以降のスネ夫のミニチュアによる活躍が盛り上がりきらない印象を受けた。
……などというイチャモンレベルの違和感はあったけれど、それは実際些末なことだろう。(東宝特撮映画風のオープニングクレジットはナイスだった!)
むしろ、改変によってキャラクター造形やドラマ性が深まっている要素も確実にあり、総じて良いリメイクだったと思える。
少年大統領のパピは、原作及びオリジナル映画では、さすがに聖人君子過ぎて、完全無欠過ぎるキャラクターだったが、本作では姉ピイナを新登場させることで、垣間見える幼さや弱さも含めて少年らしい側面を描き出すことができていた。
また、悪役のドラコルルにおいても、単なる悪人キャラではなく、属するクーデーター軍の忠実な軍人としてのキャラクター性が強まっていた。
決して冷酷無比ではなく、心の奥底では絶対的支配者であるギルモア将軍の蛮行に虚無感を覚えていたり、むしろ敵対するパピに対して信頼感や敬意を孕んでいる節すらあった。そして、ラストでは部下の処遇を心配するなど人間的な深みが増していたと思う。
この敵側のキャラクター性の改変は、ストーリー全体のテーマにも影響しており、暴力による独裁や支配がいかに愚かで、虚しいものであるかを物語る上で、より効果的に機能していたと思う。
のび太たちが攻撃をする対象があくまでも「無人機」であることを念押しした台詞回しにも現代的な心配りと、憎しみの螺旋を断ち切ることへの強い思いを感じた。
そして、この「のび太の宇宙小戦争」が物語るそのテーマ性は、本作がコロナ禍による一年間の延期を経て、今この時期に公開されたことに運命的にリンクする。
世界は今、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う「戦争」の只中だ。
本作の中で描き出されたシーンの数々は、現実世界で日々伝えられる映像と多々重なる。その深刻さは、事程左様に重くのしかかるようだった。
きっと今この瞬間の現実世界においても、ドラコルルのような悲しき軍人が虚しい暴力を望む望まざるに関わらず振るい続けているのだろう。
僕の横で、純粋な眼差しをスクリーンに向ける子どもたちにそんなことを意識させる必要はないけれど、僕たち大人たちは、この状況の意義を深く考えるべきだと思った。

Information
タイトル | 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021 |
製作年 | 2021年 |
製作国 | 日本 |
監督 |
山口晋
|
脚本 |
佐藤大
|
キャラクターデザイン |
丸山宏一
|
声の出演 |
水田わさび
|
大原めぐみ
|
|
かかずゆみ
|
|
木村昴
|
|
関智一
|
|
朴路美
|
|
梶裕貴
|
|
諏訪部順一
|
|
香川照之
|
|
松岡茉優
|
|
鑑賞環境 | 映画館 |
評価 | 8点 |
Recommended


画像引用:https://youtu.be/7MGNOmpTm-E
コメント