先だって観た「桐島、部活やめるってよ」という映画の中で、
秋が深まる時季にも関わらず、部活に出続けている3年生の野球部キャプテンに対して、
映画の主人公の一人である幽霊野球部員が「なぜ引退しないのか?」と問う。
その疑問に対して、地味なキャプテンはこう答える。
「ドラフトが終わるまでは……」
(スカウトの人とか……?)
「来てないよ。来てないけど、でもドラフトが終わるまでは、うん」
可笑しみを多分に携えるシーンではあるが、
おそらく多くの人たちはそのキャプテンの様を笑い飛ばすことなんて出来ないだろうと思った。
かつて野球部員であろうと、なかろうと。
今年も、プロ野球のドラフト会議が終わった。
指名が有力なスター候補選手から当落線上ギリギリの有望選手、
そして、実際は箸にも棒にもかからないすべてのアマチュア選手に至るまで、
夢を追う“野球選手”の数だけ、今年もドラマがあったのだろう。
メジャーリーグが確固たる「進路」の一つとして確立されたことにより、
プロを目指す野球選手たちの方向性は益々多岐に渡り、
故に難しい立場に立たなければならないことも多くなった。
18歳の高校生に、自分が望んだ道以外の選択肢を半ば強制的に強いることは、一見可哀想にも見える。
しかし、実際はそれすらも、
彼らが野球選手という高みを目指していく上で背負わざるを得ない「責任」の一端なのだろうと思う。
90%以上の“野球選手”たちは、選択肢すら与えられることはない。
国内に留まるべきという大人たちの思惑にさらされることも、
“おじさん”のコネにしがみつくなと揶揄されることも、
選択肢を与えられた者たちの「責任」なのだろう。
それらすべてを背負い、そして蹴散らして、
「プロ野球選手」としての結果を残していくことしか許されない。
厳しいことだ。
ただ、その厳しい現実を背負う姿は、
やはりすべての男たちの憧れだと思う。
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