おヒサシネマ! 「スター・トレック(2009)」

久々鑑賞☆おヒサシネマ!

 

必ずしも映画に限ったことではないかもしれないが、優れたエンターテイメントに不可欠なものは、何を置いても“手際の良さ”だと思う。
作品の規模が巨大になり、ブロックバスター化する程、その要素を制したクリエイターのみが娯楽性を制し、ヒット作を連発するのだと思う。

その素養を今最も備え“エンターテイメント”においてもはや「スピルバーグの後継者」とまで言わしめる存在になったのが、今作の監督J・J・エイブラムスだ。
彼の手掛けた映画をもう何作も観てきたが、どの作品にも感じることこそがその“手際の良さ”であり、それは即ち「娯楽」を創造する巧さだと思う。

必然的に限られた映画の尺の中で、膨大な情報量とそれに伴う娯楽性を詰め込み、それを誰しもが理解できる表現と展開で見せてくれる。
しかも、その映画世界は決してオーソドックスなわけではなく、常に最新の映像技術をもって新しい世界を観客に見せてくれている。
それはまさに、かつてスティーブン・スピルバーグが辿った映画道を彷彿とさせる。

世代的な乖離もあり、この作品を観るまで「スター・トレック」というSFエンターテイメントの一大ブランドに全く触れたことがなかった。
壮大なスペースオペラシリーズとして、しばしば「スター・ウォーズ」と比較されるが、世界的にファン層の広い「スター・ウォーズ」に対して「スター・トレック」はよりマニアックな印象を受け、何となく踏み込めない“領域”だった。

しかし、そういった観客が持つある種の「障壁」も、J・J・エイブラムスは持ち前の“手際の良さ”で見事に乗り越えてみせている。
エンディングタイトルが表示された瞬間、思わず「素晴らしい」と言いたくなる。
それくらい想像以上に充実したSF世界を見せてくれる。

何よりも素晴らしいのは、「無音」の表現だ。
「スター・ウォーズ」をはじめとして、宇宙空間の中での激しい戦闘を描いた映画は多々ある。
しかし、火花散る激しい戦闘シーンにおいて、“静寂”を挟み込み、宇宙空間の本質である「無音」と「闇」を観る者に意識させる映画は余り無い。
エンターテイメント映画である以上、シーンが激しくなればなるほど、大迫力の戦闘音は映画の表現として不可欠なものだろうが、実際の宇宙空間においてはどれほど激しい戦闘が繰り広げられようとも決して「音」は生まれない。

そういう「宇宙」そのものの基本的概念をこの映画はしっかりと意識し、その上に卓越したエンターテイメントを構築している。
おそらくそれは、この有名なスペースオペラのシリーズを通じて引き継がれてきた要素なのだろう。

“手際の良さ”といえば、新シリーズスタートにおけるストーリー展開の巧さも素晴らしい。
長い年月をかけて愛されてきたシリーズ作だけに、旧シリーズへの愛着が深いファン層も多く、リブートするにあたって下手なストーリー展開をすれば、総スカンを食らう可能性は当然あっただろう。
SF的ストーリーを巧みに操り一種のパラレルワールドを構築し、誰もが納得できる形で「新しい世界」を描き出した展開は見事だと思う。
若いキャスト、若いスタッフにより、「また新しいスター・トレックが始まった!」という高揚感を観客に植え付けられたことが、この映画の最大の成功要因だと思う。

「宇宙」に対する崇高なまでの美意識、それに裏打ちされた圧倒的に魅力的な世界観に、突如生まれた“ブラックホール”の如く吸い込まれそうになる。

さあ“復讐”、じゃない“復習”も済んだところで、心置きなく「イントゥ・ダークネス」を観に行こう!

 

「スター・トレック(2009) Star Trek」
2009年【米】
鑑賞環境:Blu-ray(字幕)
評価:9点

コメント

  1. TKL より:

    どもども。
    そうだねー。もっと完全なオリジナル作品で彼の娯楽映画監督としての真価を見たいね~。

  2. こじか より:

    ここ10年内のハリウッド大作中で一番好きだな~痛快過ぎて笑ったもん^^。最高だった。
    JJはリメイクものばかりじゃなくてスーパー8みたいにオリジナルにも取り組んで欲しいよ。なに?スターウォーズもやるんだっけ…?ま、どっち転んでも期待の超新星だなぁ。
    続編鑑賞羨ましす>_<)

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