バロンドール

澤穂希がバロンドール(FIFA年間最優秀選手)に選ばれた。

3年連続で男子の同賞に選出されたリオネル・メッシと並ぶ姿を見ると、

それがどれだけもの凄いことかということが分かりやすく伝わってくる。

日本国民とすれば、今回の栄誉は当然だとは思うし、実際選定における澤穂希に対する支持率も抜きん出ていたようだ。

ただそれでも、この“快挙”には驚きを覚えるし、改めて、彼女となでしこJAPANが成したことの「偉業」ぶりを痛感する。

昨年のワールドカップ制覇以降、日本のメディアは当然のようになでしこJAPANとそのチームの揺るぎない核心である澤穂希をはやしたてた。

容易に想像できたことではあったが、各種メディアのフィーバーぶりはやはり過剰であり、

ワールドカップ直後から国内のレギュラーシーズンとロンドン五輪予選の過密スケジュールをこなさなければならなかった選手らにとっては負担以外の何ものではなかったろう。

それでも自分たちに与えられた役割を認識し、メディアに対する愛想のふりまきと、アスリートとしての「勝利」を両立させた彼女たちのパフォーマンスは、本当に素晴らしかったと思う。

その中でも特に、澤穂希の振る舞いは印象的だった。

様々なメディアやイベントに澤穂希が登場している様子を見たが、一貫して彼女は「冷静」だった。

時に「もっと浮かれても良いのに」と思える程、努めて過剰な感情表現を抑えて様々な「仕事」をこなしていたように思えた。

そこにあったは、まさにプロフェッショナルの振る舞いだったと思う。

どんなにもてはやされ、どんなに名誉ある賞を受け取ろうとも、

自分に求められていることは、次の試合の勝利であることを澤穂希という人は誰よりもよく理解しているのだと思った。

ロンドン五輪までもうあと半年。

バロンドールを受け取りにスイスまで赴いている澤穂希だが、最新のインタビュー等の映像を見る限り、

おそらく頭の中は“五輪での勝利”しかないように感じた。

一年前のワールドカップを制したからといって、エースがバロンドールを穫ったからといって、

当然だがロンドンでの勝負事において、アドバンテージがもらえるわけではない。

正直、ワールドカップ以上に厳しい試合が待ち構えているだろうし、

そこで勝ち続けようと言うのならば、ワールドカップ以上の奇跡的な勝利が必要だろう。

そのことを誰よりも認識している日本のエースのたたずまいに、やっぱり期待せずにはいられない。

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