女優

実は、5年ぶりにNHKの朝の連続テレビ小説、いわゆる“朝ドラ”を観ている。もちろん録画してだが。

5年前に観ていた作品は、宮崎あおいがヒロインを演じた「純情きらり」だった。

普段であればそれほど興味も示さない“朝ドラ”を僕が見始めるきっかけは、

言わずもがな、“主演女優”に対する関心の高さに他ならない。

今秋からの朝ドラの主演女優が発表されたは今年の始め頃だったろうと思う。

現在放映中の朝ドラ「カーネーション」の主演女優の名は尾野真千子。

たぶんだが、その名前を聞いても多くの人はピンと来なかったことだろうと思う。

ただ僕は、「マジか!?」と、ネットのニュース記事を見て声を発した。

彼女の演技を初めて観たのは、14年程も前に遡る。

1997年に公開された「萌の朱雀」という映画で、当時中学3年生の尾野真千子は主人公を演じた。

ただの“主演”ではない。

この映画のロケ地だった奈良県の地元の中学校で“靴箱掃除”をしていたところを、

監督である河瀬直美にスカウトされ、「大抜擢」なんて言葉では済まされない状況で映画初主演を果たしたのだった。

公開当時、高校一年生くらいだった僕は、積極的にあらゆる映画を観始めた頃で、

訪れた地元のミニシアターでこの地味な日本映画を観た。

「衝撃」だった。

奈良県の山村の一家族を描いた映画自体の情感はもちろん素晴らしかったのだが、

何よりも、その当時の僕の心を掴んで話さなかったのは、

主演女優の存在感だった。

演技経験など無いのだから、当然素人臭さは滲み出ていた。

ただそんなことどうでもよくなるような、

“女優”としての本質的な輝きが、スクリーンに映し出される素人の少女から溢れていた。

それなりに沢山の映画を観ているけれど、なかなかそういう経験はあるものではない。

“彼女”がこの後、女優を続けていくかどうかなど定かではなかったが、

その映画を見終わった瞬間から、僕は女優・尾野真千子のファンになった。

それから十数年。幸いにも、尾野真千子は女優としてのキャリアを堅実に積み重ね、徐々にメジャーな映画やドラマにも顔を出すようになった。

暫くしてから知ったのだが、彼女は僕と同い年で、誕生月も一緒だった。

そういうことを知ると、尚更親近感を覚えてしまうもの。

当然、個人的に何の関係性も無いのだが、何だか地元の同級生のような感覚で、

映像で見る度に“良い女優”になっていく彼女の様を勝手に嬉しがっていた。

そんな「女優」が、ついに「朝ドラ」のヒロインにまで駆け上がってきたのだから、

それはもう観るしかあるまい。

実際、ドラマ自体も面白い。

ストーリーはベタっちゃベタだけれど、そういうドラマをを面白く魅力的に見せるのが女優の力量だとも思う。

もちろん、好きな女優は他にも沢山いるし、もっと演技のうまい女優も沢山いる。

ただ、これほど親身になって応援したくなる女優は他におらず、それはそれで嬉しいことだと思う。

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