“地元”であろうと、あくまで今回は「旅行」なので、しっかりと「道後温泉旅行」を満喫しようと決めていた。
朝から天気はあまり良くなく、今にも雨が降り出しそうだった。
車で行けば天気なんて気にしなくていいし、簡単なことだが、
やはりそれでは味気ないので、自宅の最寄り駅から郊外電車に乗って、松山市駅まで行った。
松山市駅から市内電車に乗り継いで道後温泉まで行くのだが、
そこも普通の路面電車に乗ったのでは面白くないので、「坊ちゃん列車」に乗ることにした。
道後温泉旅行者としては、当然の選択だろう。
道後温泉駅行きの坊ちゃん列車の時刻まで小一時間ほど待たなければならなかった。
松山市駅前に降り立ち、「ここが松山市かあ」「田舎だね」とか言いながら、
まだ郊外電車に9分ほど乗ってきただけだが、小休止することにした。
初めて入った「ひぎり茶屋」で、相当久しぶりに「ひぎりやき」を食べた。
焼きたてのひぎりやきは、がわがパリッと香ばしく、尚かつふんわりとしていて、
たっぷりの小豆あんとのコンビネーションが抜群に美味しかった。
そして、とても懐かしさを感じた。
坊ちゃん列車の出発時刻が近づいてきたので、駅に行ってみると、
既に出発を待つ列車の中に客が詰まっていた。
何とか座れたが、その後も乗車客は続き、出発する頃には小さな車内が乗客で溢れた。
やはり観光客には、坊ちゃん列車への乗車は「定石」なのだと思い知った。
そして、この列車には、観光客は乗るべきだと思わせる雰囲気があった。
運行する車内は、想像以上にゴトンゴトンと揺れ、木製の客席ではすぐにお尻が痛くなり、狭い車内では隣の客の息づかいが耳元で聞こえる。
合間に挟み込まれる乗務員のガイドの通りに、
その決して快適ではない空間はまさにタイムスリップしたようであり、
夏目漱石が表現した通りに、
「マッチ箱のような汽車」だった。
つづく。
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