ハネムーン vol.13「食べて、眠って……」

ハミルトン島、3日目。

お昼近くまでプールやら海やらで泳いだり、休んだりしていると、

当たり前のようにお腹が空いてきた。

昼食をとるため、ヨットハーバーへ向けてバギーを駆った。

「フィッシュ&チップス」が美味いというファーストフードの店に行き、店の前でヨットとかもめを見ながら食べた。美味かった。

日本というか松山にもこういう店があれば良いのにと思った。

そういえば、昔、海の近くでアイスクリーム屋を開くことが、密かな憧れだった時期があった。

“フィッシュ&チップス”とアイスクリームを合わせて店を開けば、場所によれば儲かるかもしれない。

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ファーストフード店の3軒隣の酒屋でワインを買って、ホテルに戻った。

ホテルに戻るなり、満腹の愛妻は昼寝を始めた。

このように書くと、我が愛妻は常に眠っているようだが、僕は決してそれを否定しない。

なぜなら、ハネムーンの行き先でこの島を選んだ理由は、第一にリラックスするためだからだ。

食べて、眠って、海を見る。

その繰り返しで良い。そういう時間を共有することこそが、ハネムーンであり、結婚というものだと思う。

とは言いつつ、せっかく来た旅先で眠っていられる程、豪快な精神を僕は持ち合わせていないので、

風が吹き抜けるベランダで、一人まったりと読書をすることにした。

ロゼワインと唐辛子が入った激辛チップスを片手に、

羽田空港で買った伊坂幸太郎の「終末のフール」の文庫を読みふけった。

世界の終末と、その中で生きる人たちの人間模様を独特の“救い”をもって描写した物語は、

自分の「日常」ではない空気の中で読むにふさわしいように思えた。

終末のフール

日が傾きかけた頃、愛妻が起きてきた。

ふと見ると、ビーチが干潮で沖合の方まで歩けそうだったので、散歩に出掛けた。

松山に住んでいても近場の海にたまに行くが、夕刻の潮がひいた海が好きだ。

干潮の浜辺を波がうっすらと流れていく様子を見ると、何だかとても安心する。

砂の中に見え隠れするヤドカリを探したり、石を拾ったりした。

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極めてまったりとした午後の時間が過ぎた。ただ、これこそが自分たちが望んだハネムーンだと感じた。

この島も翌日の午前中にはサヨナラ。それを思うと、無性に寂しくなった。

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