前々から言っている通り、
僕は「春」という季節が、嫌いだ。
嫌いというよりも、苦手だと言った方が正確かもしれない。
周囲の環境が、新しい人とものに溢れる空気感が、とても居心地悪い。
満ちあふれる新鮮味が鬱陶しくて、尻込みしてしまう。
そんな鬱蒼とした季節に、更に落ち込み滅入り、逆にこの季節に読むことが最も相応しいと思わせる特異な小説を読んだ。
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1) (2010/04/08) 湊 かなえ |
一年程前に「本屋大賞」に輝いたベストセラーとして書店に平積みされていた頃から非常に気になってはいた。
が、ポップに「とても後味が悪い」というようなことが記されていたので、敬遠してしまっていた。
今年映画化されるという報を聞き、さて映画を先に観るべきか、原作をきちんと読んでおくべきか迷っていたが、
昨日、文庫版が発売されているのを見つけ、即座に購入した。
一気に読み切った。
ポップの通りに、非常に後味の悪い作品だった。しかし同時に、読むことを止められない小説だった。
幼い娘を亡くした女教師の“告白”からこの物語は始まる。
その「死」にまつわる真相を、事件に関わった中学生たちを中心とした「独白」によって連ねていく。
各人の告白を、形の異なる文体で綴ることにより、一つの「真相」が、禍々しい渦のようにぐるぐるとその形を変えていく。
人間の根本的などす黒さに満ちた描写には、文体でありながら思わず目をそむけたくなる。
しかし、描かれる「闇」は決して自分たちの日常から解離したものではない。
すぐそばに普遍的に存在するもので、それを見据え、潔く描き切った世界観が凄い。
「人間の愚かさ」などという形容ではとても足りない、人間の本質的なおぞましさ、そのありのままの姿を描いた作品だと思う。
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