「オーストラリアと言えば何?」
という問いの答えの1位、2位を争う定番と言えば、やっぱり「コアラ」だと思う。
オーストラリアに初めて旅行に来た世界中の人々は、ほとんどみんな「コアラを抱きたい」と思うのだろう。特に女性は。
けれど、元来そんな“メルヘンチック”な乙女心を頑に否定しようとする僕の妻は、
「コアラなんて別に抱きたくはない」と、端から言い放ち、
コアラに関する観光コースなど目もくれなかった。
僕自身も、コアラという動物に対して興味が無いわけではなかったけれど、それほど執着も無かったので、
オーストラリアに来たからといって、特にコアラと触れ合う必要もないと思っていた。
もちろん、機会があればそれはそれで良いと思っていたけれど。
が、懇願しないことこそ、意外にあっさり叶うもの。
ハミルトン島二日目。
目覚めると、部屋の窓の外には当たり前のようにターコイズブルーの海が広がっていた。
ベランダから乗り出すように、目の前に広がる海と島の風景を仰ぐ。
すると、早速お腹が空いてきた。
日常では朝食なんてちっとも食べないけれど、こんな景色を前にしてお腹が空かないなんて嘘だ。
まだグーグーと寝ていた妻を起こした。
朝食…、いやブレックファーストは、指定の3カ所のレストランのうちからいずれかを選んで、
朝食バイキングを食べるシステムになっていた。
3泊するので、順番に一通り行ってみようと思い、適当に最初のレストランを選んだ。
すると、そこにコアラがいた。
そこは小さな動物園が併設されていて、コアラを見ながら食事ができるレストランだった。
というわけで、まんまとベタな感じで、間近で眠そうなコアラを見ながら朝食を食べた。
なんなら別料金でコアラを抱いて写真も撮れるようになっていたが、
前述の通り、そこまでこの動物との触れ合いに執着はない、というかむしろ朝ご飯を食べることに意識が集中していたので、どっかりと腰を据え、写真撮影に興じる他の観光客を眺めていた。
朝食時間の終了間際、飼育スタッフが三頭のコアラを抱いて近くに来てくれたので、胴体を撫でてみた。
コアラの毛並みは決してフワフワなんてしてなくて、たわしみたいにガシガシしていた。
その感触は気持ちいいものではなく、しがみつく爪先は大袈裟な程に鋭利だったが、
コアラという動物の、別大陸の獣としての存在感を感じて妙に納得してしまった。
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