「のぼうの城」

「のぼうの城」という時代小説を読んだ。

時代小説があまり得意ではない。というか、ほとんど読んだ事がない。

だけども、今かなり売れている様子で、カバーイラストがオノ・ナツメということで、購買意欲にかられた。

舞台は、豊臣秀吉が天下統一を成し得た小田原征伐。
北条氏方の支城を次々と平定していく中で、石田三成が率いた2万の軍勢を、武者・百姓合わせて数千で迎え撃ち、「忍城」と呼ばれる居城に籠って戦い抜いた成田長親なる武将の稀有な人間性を描いている。

名だたる戦国武将は数多いが、この小説で描かれる成田長親なる武将のキャラクターは、まったく特異である。
武勇があるわけでも、頭脳明晰なわけでもない。家臣はおろか、領内の百姓からも「でくのぼう」を文字って「のぼう様」と呼ばれる低落。

ただ彼には、知らず知らずに人を惹き付ける絶対的な「人気」と、類い稀なる絶大な「将器」があった。

その「人間性」をもって、大武将・石田三成の大軍勢を凌駕する様が、実に爽快だった。

この隠れた名将の存在を描くと共に、それに仕えた優秀な家臣らのキャラクターも負けず劣らずユニークで魅力的。
そして、敵方である石田三成にも、その潔さと、大武将としては似つかわしくない不器用さに、その後の悲運も含めて哀愁を感じずにはいられなかった。

大河ドラマなどを観ていても思うが、歴史上の人物に対する価値観というものは、立場や考え方によって180度変わるものだと思う。
例えば豊臣秀吉にしても、一般的には日本史を代表する大偉人だが、少し見方を変えれば独裁者であり、大悪人でもあると思う。

どういう捉え方をすることが、正しいとか悪いとかではなくて、一つの結論を100%鵜呑みにしてしまわない事が、大切だと思う。

タイムマシーンが発明されない限り、歴史の真実を完全に知り得ることなど不可能だから。

のぼうの城のぼうの城
(2007/11/28)
和田 竜

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