歴史的スペースオペラの“伝説”が今完結した。
旧三部作からの20年余りに及ぶこの作品をリアルタイムで見てきたわけではないが、それでもその長きに渡って世界中を魅了し続けてきた壮大な映画世界の終焉には、感慨深いものがあった。
公開に際して多くの人々が「泣ける」ということを口にするので、さすがにそれはないんじゃないかと疑問を感じていた。
しかし、すでに分かりきったことであるはずなのに、アナキンがベイダーへと転じジェダイの騎士たちを葬りさっていくシーンでは胸が詰まった。愛に対してまっすぐであり過ぎるが故に、とうとう暗黒面に転じてしまうアナキンの姿に締めつけられそうになる。
このシリーズは巨大であり、伝説であるが、すべてを通して描かれたものは、たったひとりの男の哀しく苦しい運命だったのだ。
この映画を観たすべての人が「ほんとうに馬鹿な男だねえ……」という、まるで古い日本映画のよう普遍的な感想を持つはずだ。普遍的ではあるが、観客が受ける心の揺れは計り知れない。
そうジョージ・ルーカスがその映画人生のすべてをかけて生み出したこの果てしない映画世界は、アナキン・スカイウォーカーという男の人生における愛情と苦悩が幾重にも折り重なった哀しく愛しい“不器用さ”を描くためにあったのだ。
結局、最愛の妻までも亡くしてしまった黒ずくめの彼の最後の叫びは、その後20年余り暗く乾いた闇の中で、静かに静かに響き続ける。
“新たな希望”に出逢うまで。
「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 Star Wars: Episode III – Revenge of the Sith」
2005年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:10点
コメント