数年前からの流行りではあるが、時代劇の漫画がなかなか多い。
各作品とも現代のテイストと独自の世界観をもって描かれている。
個人的に今「押し」の時代劇漫画が二作品ある。
ひとつ目は、今絶対的にマイ・ブームの漫画作家オノ・ナツメがIKKIにて連載中の「さらい屋五葉」。
気弱な浪人・政之助(実は凄腕)が、一癖二癖ある誘拐一味「五葉」に引き込まれ、誘拐業の片棒を担ぎながら、それぞれの人間模様を紡ぎ出していく異色作。
他作では、主に欧州の環境を舞台にした作品が多いオノ・ナツメが、一転日本の時代劇を描き、独特の空気感を演出している。
キャラクターの多様性、特異な軽やかさと深みを併せ持つ空気感、おそらく映画化の話がすでに賑わっているのであろう秀作だと思う。
さらい屋五葉 1 (1) (IKKI COMICS) (2006/07/28) オノ ナツメ |
ふたつ目は、もはや新進の漫画作家の中では大御所とも言える松本大洋の「竹光侍」。
こちらも風変わりな浪人ながら実は豪剣の主人公が、居住している長屋を中心に展開する人間模様を、松本大洋独特の精神世界を混じり合わせながら描き出す。
日本画のテイストをベースにした挑戦的で革新的な画風は、この気鋭の作家が新たに辿り着いた境地と言える。
時代劇ならではの趣を踏まえた小気味いい台詞回しには、相変わらずにずば抜けた作家性を感じずにはいられない。
「さらい屋五葉」とは逆に、独特の間と精神世界が作品の核心だけに、非常に映像化が難しいと思う。
竹光侍 1 (1) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) (2006/12) 松本 大洋、永福 一成 他 |
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