「ドラゴン・タトゥーの女」

2012☆Brand new Movies

 

正直、ハードルが上がりすぎてしまっていたのかもしれないと思う。
それは、昨年観た「ソーシャル・ネットワーク」で、一つ高みへ登った感を受けたデヴィッド・フィンチャーの最新作であることが最も大きな要素だった。そして、映画の“スタンス”そのものが魅力的な「謎」に彩られたイントロダクションにも、相当に惹き付けられていた。
スウェーデン発の爆発的人気を誇る原作の映画化において、観たことが無い映画世界を見せてくれそうな予感が「期待」を増幅させていた。

決して「駄作」だとは思わない。しかし、「傑作」と呼称するには明らかに何かが足りない。158分という上映時間に“長さ”は感じなかったけれど、流れ始めたエンドロールを見据えながらそういう印象を覚えずにいられなかった。

まず期待に及ばなかったのは、ストーリーの顛末だ。
イントロダクションの段階では、斬新なミステリー展開を期待してしまっていたのだけれど、実際繰り広げられたのは想定外に古典的なミステリー構成だった。
曰く付きの大富豪一族から依頼を受けたジャーナリストの主人公(探偵役)が、一族間に隠された確執を紐解きながら或る「真相」に辿り着く。アガサ・クリスティーか横溝正史のミステリーのような非常に古典的なプロットに、いささか拍子抜けしてしまったことは否めない。
そして、仰々しくミステリーの風呂敷を広げた割には、明かされた「真相」は“ありきたり”の範疇を出ず、著しく驚きに欠けていたと思う。

また、主人公二人を始めとするキャラクター描写にも物足りなさを感じた。
ダニエル・クレイグとルーニー・マーラの主人公コンビが醸し出す雰囲気は非常に良く、ポスターから滲み出る二人の空気感だけで、この映画に対する言葉にならない期待感が膨らんだと言っても過言ではない。
実際、彼らは演技的にもとても“頑張っていた”と思う。ただそれが、そのまま「もの凄く良い演技」という印象には直結しなかった。
それはやはり、キャラクター描写そのもの薄さにあると思う。彼らのバックボーンを含めた人物描写が希薄なので、それぞれの行動原理に理解が及ばず、すんなりと感情移入出来なかったことが致命的だったと思う。
特に、ルーニー・マーラが文字通り“体を張って”熱演したリスベットというキャラクターは、その風貌から言動まですべてがエキセントリックで印象的だったけれど、彼女が現在に至る経緯や成長過程があまりに明確にされないので、人間味を感じることが出来なかった。
ルーニー・マーラは、「ソーシャル・ネットワーク」の冒頭で登場する主人公の元カノ役と同一人物とはとても思えない変貌ぶりで、見事な役づくりとそれに伴うパフォーマンスを見せたと思うが、そういう人物描写の薄さからキャラクターとして「好き」になるには至らず、単なるエキセントリックガールに映ってしまったことは残念だ。

そして何よりも不満だったのは、全体的にデヴィッド・フィンチャー監督の画面に対する拘りに軽薄さを感じてしまったことだ。
オープニングタイトルの何とも形容し難い不思議な映像世界こそ惹き付けられたが、思い返してパッと浮かび上がるような印象的なシーンが殆どない。
全編通してしっかりと作られていることは分かるが、何かしらの「特別感」がこの映画世界からは伝わってこなかった。

エピローグの顛末と主人公二人の関係性も何となく微妙に結してしまったように思えて、“もやもや感”が最後まで払拭されなかった。
今作は三部作の原作の第一章であり、映画としても三部作構成で企画されている。今作で乗り切れなかった分、続編での挽回に改めて期待したい。

それにしても、あの“モザイク”は酷い。「20年前のAVかよ」と思わず突っ込みを入れたくなり、大いに興が冷めてしまった。無名女優が己の未来を切り開こうと、体を張って熱い演技を見せているのだから、そのあたりをちゃんと汲んだ映像処理をしてほしい……。

 

「ドラゴン・タトゥーの女 THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO」
2011年【米・スウェーデン・英・独】
鑑賞環境:映画館
評価:5点

コメント

  1. soramove より:

    映画「ドラゴン・タトゥーの女」オリジナルを見ていても楽しめるフィンチャー 版

    「ドラゴン・タトゥーの女」★★★★
    ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、
    クリストファー・プラマー出演
    デヴィッド・フィンチャー 監督、
    158分、2012年2月10日公開
    アメリカ,SPE
    (原題:THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO )
    <リンク:人気ブログランキングへ”>>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい←
    「2年前に見たばかりの作品、
    しかもミステリー映画とくれば
    ラストが分かっていて楽しめるだろうか?
    そんな危惧は全くの杞憂だ、
    切り口、見せ方が違うとこうも違うのか、
    ハリウッド版のこの作品も面白かった」
    リメイクながら舞台はスウェーデンのまま、
    まさに海外版「犬神家の一族」の
    凍った世界を見つめた、
    雪に閉じ込められた小島、
    親しげに接しながらも
    そこには厳然と境界線があり
    そこには決して立ち入らせない。
    ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)が
    オリジナル版と比べてカッコ良すぎで
    これじゃあドラゴンタトゥーの女も
    すぐに好きになるじゃないかと
    ストーリー展開とは別に軽く突っ込みを入れながら
    今回は結末は知っているので
    それをどう見せてくれるか
    そのことだけを楽しんだ。
    スウェーデン有数の財閥ヴァンゲルの
    元会長から依頼された40年も前の
    彼の娘ハリエット失踪事件、
    オロジナルで感じたのはのんびりと
    一見平和そうに見える場所で
    密かに進行していた恐ろしい事件、
    その不似合いさこそが
    描かれた真実以上に怖さを与えていたが
    今回はそういったことを知った上で見たわけで
    真実が明らかになった時の驚きも薄い
    けれど綿密に積み上げた小さな真実から
    「大きな秘密」に近付くまでの
    絡み合った糸をほぐす様子は
    そのカット割の見せ方の巧みさも相まって
    思わず座席から前のめりに見入った。
    天才ハッカーのリスベットの描き方は
    ちょっと不満もある
    この映画の描き方だと
    オロジナルを見てない人に彼女のことが
    どれだけ伝わるのかと
    親のような気分で心配になるのだ。
    彼女の繊細さが後ろに隠れてしまい
    彼女のドラゴンタトゥーの女たるゆえんが
    ぼやけてしまったのは惜しいところだ。
    ラストの彼女の痛み…

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