おヒサシネマ!「007 スペクター」 “稀代のヴィランの取り扱いの不味さが唯一にして致命的な弱点”

スペクター久々鑑賞☆おヒサシネマ!

スペクター

評価: 7点

Story

メキシコでの休暇中に起こした不祥事により、全ての任務からはずされたボンド。Mの監視から逃れ単独でローマへと赴く。そこでボンドは殺害された悪名高い犯罪者の未亡人であるルチア・スキアラと出逢い、悪の組織スペクターの存在をつきとめる。
その頃、ロンドンでは新国家保安センターの新しいトップ、マックス・デンビーがボンドの行動に疑問を抱き、Mが率いるMI6の存在意義を問い始めていた。ボンドは秘かにマネーペニーやQの協力を得ながら、スペクター解明の手がかりとなるかもしれないボンドの旧敵、ホワイトの娘マドレーヌ・スワンを追う。
死闘を繰り広げながらスペクターの核心部分へと迫る中、ボンドは追い求めてきた敵と自分自身の恐るべき関係を知ることになる-。 Amazonより

映画『007 スペクター』予告2 2015年12月4日公開
【最新予告解禁!】今回解禁された予告では、“スペクター”として知られる悪の組織の存在、そして…ボンドの封印された秘密に迫る―。『007 スペクター』12月4日(金)全国ロードショーFacebook::

 

Review

ダニエル・クレイグ版007の第四弾は、前作「スカイフォール」に引き続き、名匠サム・メンデスが監督を担っただけあり、オープニングのアバンタイトルからクオリティの高さが際立っている。
メキシコの大祭「死者の日」のパレードの描写から始まるオープニングシーンは、ファーストカットから精巧に作りこまれた“ワンショット風”映像で映し出される。
実際に長回し撮影された映像ではないと思われるが、仮面で表情を隠したジェームズ・ボンドの登場からミッション実行に至るまでの一連のシークエンスに“隙”は無く、一気に引き込まれる。
その後の建物崩壊から悪役とのヘリコプター内で決死の格闘シーンへと怒涛のスペクタクルシーンが繰り広げられ、シリーズ屈指のアバンタイトルに仕上がっていたと思う。

前作「スカイフォール」でサム・メンデス監督が築き上げた新時代の「表現美」を携えたまま、今作では、往年の「007」シリーズを彷彿とさせるギミックやケレン味がたっぷりと用意されており、「娯楽映画」としての魅力を高めている。

活劇の舞台となるロケーションも、冒頭のメキシコを皮切りに、ローマの聖堂、オーストリアの雪山、モロッコの砂漠と、バラエティーと情景美に富み、実に007らしいアドベンチャーを堪能できる。

また、ベン・ウィショー演じる“Q”の現場出張をはじめ、ナオミ・ハリス演じる“マネーペニー”、そしてレイフ・ファインズ演じる新“M”ら、前作から引き続きボンドをサポートするメンバーたちの活躍と“チーム感”も熱い。(おっと、Mの側近としてクレイグ版では唯一の皆勤賞を達成したロリー・キニア演じる“タナー”の存在も忘れてはならない)

そして、前作唯一の“物足りなさ”だったボンドガールの「美」も、今作は申し分ない。(いや、御大ジュディ・デンチも勿論お美しかったけれども)
レア・セドゥ、モニカ・ベルッチのヨーロッパを代表する新旧の両女優がそれぞれ圧倒的に美しく、あまりにも艶やかな曲線美を見せつけてくれる。
女優の美しさはただそれだけで映画の娯楽であり、芸術だ。特に「007」シリーズにおいてそれは欠かせないファクターだと痛感した。

 

と、いうふうに、「007」映画に相応しいあらゆる娯楽性と映画的なクオリティの高さに彩られた今作は、前作「スカイフォール」に続き「傑作」に肉薄していたと思う。特にクライマックス手前、悪の組織“スペクター”の秘密基地にたどり着くくらいまでは、その称号はほぼ確実だと思われた。
ただ、唯一にして決して小さくない「弱点」が、残念ながら今作の最終的な満足度を急降下させてしまっている。

それはずばり、究極の悪役として満を持して登場した“ブロフェルド”の存在感の弱さに尽きる。

名優クリストフ・ヴァルツをキャスティングし、敢えて過度なデフォルメは廃して、至極フツーのおっさん的風貌のキャラクターの中で「狂気」と「残虐」を表現しようとしたアイデアと試み自体は、的確だったと思う。
往年のシリーズ作に登場したような、スキンヘッドにペルシャ猫を抱いた“奇人”がラスボスとして姿を現していたら、それこそ違和感と失笑の極みだったであろう。

「スーパーマン」における“レックス・ルーサー”、「バットマン」における“ジョーカー”、または「シャーロック・ホームズ」における“モリアーティ教授”らのように、「007」における“エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド”もまた、時代を超えて作品がリブートされるごとに、主人公であるヒーローと共に描き直されてきたヴィランの代表格と言える。

そんな稀代のヴィランの一人として、今作の“ブロフェルド”に感じた存在感の弱さは、そのビジュアル的な地味さによるものではなく、キャラクターとしてのバックグラウンドの描かれ方と、それに伴う「動機」づけに起因していたと思う。

今作のブロフェルドの設定における最大のトピックは、なんと彼がジェームズ・ボンドの「義兄」だったというものだ。
自身の実父の元に養子としてやってきた少年時代のボンドをやっかみ、彼を実子である自分と差別なく息子として受け入れた父親を殺害し、自らの死も偽装した後に、“スペクター”という組織を築き上げたという過去が、特に具体的な描写もなく、本人の口で雑に語られる。
その描きこみがあまりに浅く希薄なので、ブロフェルドという悪党の強大さと実態が大きく乖離して見えてしまい、こんな「小者」が“スペクター”という大組織を作れるものかと鼻白んでしまうのだ。

結果、ボンドたちを余裕綽々で自らのアジトに引き入れたわりには、基地を大爆破された上にまんまと逃げ去られ、直後大けがをおして自らロンドンまで出向いて逆襲を図るもあっさりと返り討ちに合い、無様にも捕縛、投獄に至る。
悪役としての脅威や魅力を特に発揮せぬまま、物語が収束してしまったことは、あまりにも残念だったし、満足感を大いに損なう結果に繋がってしまった。

それでも、その「弱点」以外の映画的要素があまりにも素晴らしいので、映画として、特に娯楽映画としての価値が大きく下がることはないけれど、だからこそつくづく残念だったなあと思う。

 

今作で生き残ったブロフェルドは、ダニエル・クレイグ版007の最新作にして最終作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」にも再登場する。
が、これまたあまりにも地味な“最期”を迎える。究極の悪党ながら、つい同情してしまった。

 

おヒサシネマ!「007 スカイフォール」 “圧倒的表現美による007の完成形”
このダニエル・クレイグ版007の第三弾「スカイフォール」の監督が、サム・メンデスだったことは、結果的に「007」という映画シリーズ全体にとって極めて重要なトピックとなったと思う。

 

Information

タイトル007 スペクター SPECTRE
製作年2015年
製作国イギリス・アメリカ
監督
サム・メンデス
脚本
ジョン・ローガン
ニール・パーヴィス
ロバート・ウェイド
ジェズ・バターワース
撮影
ホイテ・ヴァン・ホイテマ
出演
ダニエル・クレイグ
クリストフ・ヴァルツ
レア・セドゥ
ベン・ウィショー
ナオミ・ハリス
デイヴ・バウティスタ
アンドリュー・スコット
ロリー・キニア
イェスパー・クリステンセン
モニカ・ベルッチ
レイフ・ファインズ
鑑賞環境インターネット(Amazon Prime Video・字幕)
評価7点

 

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