評価:
8点Story
初めて愛した女・ヴェスパーを失ったジェームズ・ボンドは、ヴェスパーを操っていたミスター・ホワイトを尋問し、背後にいる組織の存在を知る。
早速捜査のためにハイチへと飛び、知り合った美女カミーユを通じて、組織の幹部であるグリーンに接近。環境関連会社のCEOを務める男だが、裏ではボリビアの政府転覆と天然資源の支配を目論んでいるのだった。ボンドは復讐心を胸に秘めながら、グリーンの計画阻止に動くが……。 Amazonより
Review
“ダニエル・クレイグ版007”再鑑賞第二弾。
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドになったこのシリーズ第二作は、公開当時から世評があまりよろしくなかった。
でも個人的には、劇場鑑賞時から極めて満足度は高かったし、今回再鑑賞を経た後もそれは変わらなかった。
むしろ、最終作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観終え、シリーズを振り返ってみると、今作が持つ意味と価値は更に高まっているように思える。
あまり世評的な成果を得られなかった原因は、製作時のゴタゴタと、全編通した「007」らしく無さにあるようだが、僕にとっては、その“らしくなさ”こそがクレイグ版007であり、映画全体の雑多な感じも、2作目にしてもはや新シリーズの“テイスト”だと許容でき、楽しめた。
今回、前作「カジノ・ロワイヤル」から立て続けに観てみたが、今作の冒頭シーンは前作のラストシーン直後の展開となっており、今シリーズが「連作」であることを明確にしている。
つまりそれは、ジェームズ・ボンドが前作で経た「悲劇」と地続きで諜報員としての任務に就き続けているということであり、その過程の中で更に深まる彼の傷と痛みの様が印象的に表現されている。
舞台となる荒涼とした南米の大地が、彼の心の乾きとひび割れを殊更に深めているようにも感じた。
このあたりの演出の妙は、「チョコレート」「ネバーランド」などドラマづくりにも長けたマーク・フォースターを監督に招いた成果だったと思える。
中盤、マチュー・アマルリック演じる悪役がジェームズ・ボンドに対して、悪意を込めて印象的な或る台詞を言い放つ。
「気の毒な男だ 手を触れる相手がみな死んでしまうからね」
結果的にこの台詞は、そのままの意味で、最終作への深い伏線となっていた。
“007”という称号を得て、その責務と貢献が高まるほどに深まる孤独と苦悩。
今シリーズで描き連ねられたものは、ジェームズ・ボンドという男の人生における無限地獄のような苦しみと、その解放だった。
今作は、そのテーマの方向性を決めた重要な作品だったとも思うのだ。

Information
タイトル | 007/慰めの報酬 QUANTUM OF SOLACE |
製作年 | 2008年 |
製作国 | イギリス・アメリカ |
監督 |
マーク・フォースター
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脚本 |
ニール・パーヴィス
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ロバート・ウェイド
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ポール・ハギス
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撮影 |
ロベルト・シェイファー
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出演 |
ダニエル・クレイグ
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オルガ・キュリレンコ
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マチュー・アマルリック
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ジュディ・デンチ
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ジェフリー・ライト
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ジェマ・アータートン
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イェスパー・クリステンセン
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ロリー・キニア
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ジャンカルロ・ジャンニーニ
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ホアキン・コシオ
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鑑賞環境 | インターネット(Amazon Prime Video・字幕) |
評価 | 8点 |
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画像引用:https://amzn.to/3DlMUEc
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