「21ブリッジ」映画レビュー “主演俳優の「不在」が喪失感と虚無感を深める”

2021☆Brand new Movies

評価: 7点

Story

ある殉職した警官の葬儀。悲しみに満ちた教会で、その息子である13歳の少年は涙を流しながら、神父の言葉を胸に刻み込んでいた。
「良心に従うこと。善悪の判断を他人に左右されないこと。この残酷な世界で、正しい道を歩むことを」。
19年後。かつての少年、アンドレ・デイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)は、ニューヨーク市警(NYPD)の殺人課で忙しい日々を過ごしていた。彼は優秀な刑事だったが、同時に問題視される存在でもあった。容赦ない捜査で知られる彼は、過去に警察官を殺した犯人を射殺したことで、同僚たちからも距離を置かれていたのだ。内務調査では、職務で発砲に及んだ正当性を追及されるが、アンドレは「正義の代価だ」と主張する。
アンドレの自宅には、尊敬する亡き父親の遺影が大切に飾ってある。年老いた母親は、最愛の夫を突然奪われた痛手をずっと引きずっている。アンドレは素晴らしい刑事だった父親に追いつこうと必死だった。
そんな折、午前0時13分 真夜中のニューヨークで事件が発生する。退役軍人のマイケル(ステファン・ジェームス)とレイ(テイラー・キッチュ)は、ブルックリンの店のワイナリーに隠されているコカインを盗み出す仕事を請負っていた。しかしその場にあったのは、彼らが想定していた量の10倍にもなる300キログラムの大量のコカインだった。 公式サイトより

2分でわかる『21ブリッジ』映像解禁!
本作の見どころが詰まった2分で『21ブリッジ』がわかる特別映像が解禁!!8人の警官を殺した強盗犯を追跡するため、アンドレ刑事(チャドウィック・ボーズマン)はNYマンハッタン島に架かる21の橋を全て封鎖する。 だが、追跡を進めるうち、表向きの事件とはまったく別の陰謀があることを悟る。 果たしてその真実とは――!? ...

 

Review

2020年8月に43歳の若さでこの世を去ったチャドウィック・ボーズマンの“遺された”主演最新作は、80年代〜90年代の良い意味で雑多な娯楽性に溢れたポリスアクションであり、今この瞬間の時代性を根底に敷いた骨太なサスペンスでもあった。

幼き頃に殉職した父親の面影と無念を追うように警察官となった主人公は、「正義」の名の下に、凶悪犯を射殺し続ける職務経歴を問題視されていた。そんな折、真夜中のコカイン強奪に絡み警察官8人が殺害される凶悪事件が発生する。
殉職した父親への想いと、自らが掲げる「正義」の正当性を信じて、犯人を追う主人公だったが、次第にくっきりとあらわになっていく陰謀の輪郭に反するかのように、信じ続けた「正義」に対する焦点がぼやけていく様が印象的。現代社会の「闇」を描くドラマとして面白かったと思う。

劇中で登場するホテルの名前が「パララックスホテル」となっていることからも明らかなように、この映画が伝えるテーマは、この社会における「視差(parallax)」であり、異なる視点で見ると浮き上がってくる社会の「真実」そのものであろう。

浮き上がった真相に失望し、絶望しながらも、主人公は己の正義を貫き通す。
しかし、事件解決という“夜明け”と共に帰路につく彼の表情は暗く沈み、その虚ろな瞳に光は無かった。

自分が幾人もの犯人の射殺も厭わず貫いてきた「正義」とは一体何だったのか?
殺害された8人の警察官たちや、欺き陰謀に巻き込んだ地元の警察官たちと同様に、もしかすると、殉職した父親にも表沙汰にならなかった“真実”が存在するのかもしれない。
そんな主人公の思い疑念に包み込まれるように、映画は幕を閉じる。

「正義」とは何か?
視点や立場によってその形は都度様変わりしてきた。
今この瞬間も、異なる正義と正義がいがみ合い、傷つけ合い、悲劇を生み出し続けている。

主人公と同じ虚しさを感じると共に、その主演俳優がもうこの世に居ない現実が重なり、喪失感と虚無感が深まる。

 

Information

タイトル21ブリッジ 21 BRIDGES
製作年2019年
製作国アメリカ
監督
ブライアン・カーク
脚本
アダム・マーヴィス
マシュー・マイケル・カーナハン
撮影
ポール・キャメロン
出演
チャドウィック・ボーズマン
シエナ・ミラー
ステファン・ジェームズ
キース・デヴィッド
テイラー・キッチュ
J・K・シモンズ
鑑賞環境インターネット(U-NEXT・字幕)
評価7点

 

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