評価:
8点Story
ドラえもんとのび太、しずかはビデオを撮影中に小さなロケットを発見する。そのロケットは“ピリカ星”の大統領パピが乗ってきたものだった。パピは独裁政治を行おうとしている反乱軍から身を隠すため、地球に逃れてきたのだ。だが、反乱軍の首謀者ギルモア将軍は、パピを捕らえようと追跡部隊をさし向けてくる。パピを守るため、ひみつ道具の“スモールライト”でパピと同じ大きさになり、“かべ紙ひみつ基地”にパピをかくまうドラえもんたち。だが、ギルモア将軍の手下にスモールライトを奪われたうえ、しずかを人質にとられてしまい…!? allcinemaより
Review
F先生(藤子・F・不二雄)の「スター・ウォーズ」好きは、「ドラえもん」に限らず彼の作品でモチーフにされていることからも明らかだ。
代表的なところで言うと、ドラえもんのエピソード「天井うらの宇宙戦争」は、登場するキャラクターたちの造形も完全に「スター・ウォーズ」のパロディであり、キャラクターたちが“小人”である設定は、本作「のび太の小宇宙戦争」に直結するものだった。
その他にも、“SF・異色短編集”に収録されている「裏町裏通り名画館」で登場する「ヌター・ウォーズ」は、オリジナルで言うところのストームトルーパーに“徴兵”される若者たちの悲しき青春を、第二次世界大戦の特攻隊になぞらえて皮肉たっぷりに描いた問題作だった。
同じく、傑作短編「ある日……」に登場する「スター・ウォーク」は、スターデストロイヤー的な超巨大宇宙船に“勤務”するストームトルーパー風の兵士たちが、長距離を徒歩で移動しなければならない不便さに不満爆発させるというコメディだった。
他にも随所に「スター・ウォーズ」のパロディやオマージュ的な描写はF先生作品の随所で見受けられる。
そして、その“SW愛”の極みとも言えるのが、大長編ドラえもん「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」だろう。
のび太たち少年少女たちが「宇宙戦争」に参戦するなんて無茶苦茶な話だ。
けれど、登場する惑星の異星人たちそのものを“小人”にすることで、惑星を丸ごと独裁する軍事国家との対決を可能にした設定がF先生らしく、流石である。
とはいえ、のび太たちも“小人”になってしまうわけで、「決死」の危険極まりないアドベンチャーであることは間違いないのだけれど、ギリギリの局面を「超強化プラスチック」や「スモールライトのききめ」という各種設定を上手く利用して回避するあたりも、無論漫画的ではあるが同時にSFとして論理的であった。
特に、スモールライトの“ききめが切れて”大逆転を巻き起こすという展開は、ドラえもん達がピリカ星に潜入する中で使用する“かたづけラッカー”や“チーターローション”のききめが切れてピンチに陥るというくだりが伏線としてよく効いており、ストーリーテラーとしての上手さも光る。
ここのところ、自分の子どもたちと共に、新旧のドラえもん映画をよく観ているが、F先生原作の大長編ドラえもんの映画化作品と、先生死後のオリジナルストーリーによる映画化作品との違いは、そういうストーリー展開の妙によるところが大きい。
新世代のアニメクリエーターたちによる昨今のドラえもん映画も、精力的にクリエイトされているとは思うが、F先生信者のオールドファンとしてはストーリーテリングに対して物足りなさを感じることが多い。
偉大な漫画家、そしてこの国を代表するSF作家としての藤子・F・不二雄の凄さを改めて感じる。
Information
タイトル | ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スターウォーズ) |
製作年 | 1985年 |
製作国 | 日本 |
監督 |
芝山努
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脚本 |
藤子不二雄
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作画監督 |
富永貞義
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声の出演 |
大山のぶ代
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小原乃梨子
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野村道子
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肝付兼太
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たてかべ和也
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潘恵子
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三ツ矢雄二
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屋良有作
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八名信夫 | |
金井大
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鑑賞環境 | インターネット(Amazon Prime Video) |
評価 | 8点 |
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