「スター・トレック」というSFエンターテイメントのブランドに、これまで全く触れたことが無かった。
壮大なスペースオペラシリーズとして、しばしば「スター・ウォーズ」と比較されるが、ファン層の広い「スター・ウォーズ」に対して、「スター・トレック」はよりマニアックな印象を受け、何となく踏み込めない領域だった。
そんなわけで、この2009年の最新作でようやく“初体験”を果たした。
いや素晴らしい。これほどまでに充実したSF世界を観られるとは正直思わなかった。
「スター・ウォーズ」をはじめとして、宇宙の中の激しい戦闘を描いた映画は多々ある。
しかし、激しい戦闘シーンにおいて、“静寂”を表現し、宇宙空間の本質である「無音」と「闇」を観る者に意識させる映画はあまり無い。
娯楽映画である以上、激しい戦闘音は映画の表現として不可欠なものだろうが、実際の宇宙空間においては決して「音」は生まれない。
そういう「宇宙」そのものの基本的概念を、この映画はしっかりと意識し、その上に卓越したエンターテイメントを構築している。
おそらくそれは、この有名なスペースオペラのシリーズを通じて表現されていることなのだろう。
“宇宙”に対する崇高なまでの美意識、それに裏打ちされた圧倒的に魅力的な世界観に“ブラックホール”の如く吸い込まれてしまった秋深まる土曜の深夜。
「スター・トレック Star Trek」
2009年【米】
鑑賞環境:Blu-ray
評価:9点
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