2006年の劇場公開から2010年の今まで、幾度となく観る機会はあったのだろうが、何となく眼中になかった「ミッション:インポッシブル」第三作目。
今作を遠ざけていた最大の理由は、ジョン・ウーが監督した第二作目のあまりの駄作ぶりによるところが大きい。
このシリーズ作としては著しくミスマッチだったジョン・ウーの世界観は、アクションシーンの激しさが増すほどに空虚感が生まれ、酷く退屈だった。
J・J・エイブラムスが監督を担った今作は、新進気鋭の映画監督らしいエッジの効いた映像がスパイ映画の雰囲気にマッチしており、ふさわしい緊迫感が備わっていたと思う。
第一作のイメージに立ち戻り、短髪で前作よりもシャープな風貌のトム・クルーズも、幾分老けた印象はあるが、格好良い“イーサン・ハント”を体を張って演じていた。
加えて、悪役を演じたアカデミー賞俳優フィリップ・シーモア・ホフマンは、得体の知れないブラックマーケットの帝王を、持ち前の表現力で怪演してみせている。
と、それぞれのパフォーマンスは概ね良かったのだが、残念なことに肝心のストーリーに面白味が無い。
シリーズ第三作目にして、非常にオーソドックスなストーリー展開をみせる。
スパイ映画の王道的シリーズなので、展開がオーソドックスなこと自体はまだ許せる。ただ、そこに興味を引きつけるだけの驚きや爽快感がまるで無い。
更には、攻防の核となる謎の“最新兵器”のディティールが全く描かれない。主人公が単身で潜入しその最新兵器を盗み出すシーンは都合良くカット。最終的にもそれが一体何だったのかは説明されずじまいで、納得がいかない。
せっかく良い存在感を見せた悪役も最期はあまりにあっけない。黒幕の正体も“常套手段”的で、最期はイーサン・ハントの妻にやっつけられる……。
全体の雰囲気は良かったのに、これほどクライマックスの展開で盛り下がる映画も珍しい。
「M:I Ⅲ Mission: Impossible III」
2006年【米・独】
鑑賞環境:Blu-ray
評価:5点
コメント