自分自身もすっかり大人になってしまい、深夜のタクシーに乗る機会も度々あるようになった。
大概の場合酔っ払っていて、繁華街から自宅までのせいぜい20分間程度の道のりなので、特に何があるということはないけれど、タクシーの中というものには独特の雰囲気があると思う。
その雰囲気は、全く見ず知らずの運転手と客との間に生じるその場限りの「空気感」によるものだと思う。
地球という惑星のあちこちで、全く同時刻にひっそりと織りなされたタクシー運転手と客らによる5つのショートストーリー。
ジム・ジャームッシュらしい淡々とした語り口で繰り広げられるこのオムニバス作品には、本当に何気ない人間同士の関わり合いにおける素晴らしさが溢れている。
それぞれのストーリーの登場人物たちが、その束の間の出会いによって、何かが変わったということは決してない。
ただそれでも、その一つ一つの出会いが、次の瞬間の人生を築いていくということを、この映画は、深夜の静寂の中でしっとりと伝えてくる。
とても良い映画だと思った。
P.S.若いウィノナ・ライダーが最高に良い……。高校時代、自室に彼女のポスターを貼っていたことを思い出すと共に、復活を切に願う……。
「ナイト・オン・ザ・プラネット Night on Earth」
1991年【仏・英・独・米・日】
鑑賞環境:DVD
評価:8点
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