特別な才能か何かを持っているわけでないのなら、人生において、本当に思い悩み、混迷するのは、十代ではなく、二十代だと思う。
知識や経験が中途半端に蓄えられ、名実共に「大人」という現実を問答無用に突きつけられる。本当は、準備なんてまだ出来ていないのに、あらゆることを無理矢理伏せて歩まされる。
道に迷って当然、それが「普通」の人間の二十代だ。
その例にもれず、僕自身、迷い惑いながら二十代の一日一日を生きてきた。
そんな中で、紛れもない一つの「指針」となったのが、浅野いにおの漫画であり、「ソラニン」だったと思う。
「指針」と言ったが、この作品の中に混迷を抜け出すための「答え」があるわけではない。
主人公たちが同じように人生に迷いながら進んでいく様を見て、共感し、ならば自分はどのように生きられるのかということを、見つめ直す機会を与えてくれた漫画だった。
5年前に初めてこの漫画を読んだ時点で、映画化は必至だと思った。
が、同時に安直な映像化だけはしてほしくないと思った。
一抹の不安を抱えつつ、ようやく上映となった地元の映画館に観に行った。
素晴らしい映画だったと思う。
浅野いにおの原作と同じ「間」で切り取られた何でもない河川敷の夕暮れを見た時点で、安堵感を覚えた。
芽衣子と種田の息づかいをそのまま表現してみせた俳優の演技に、幸福感を覚えた。
主人公の芽衣子は、恋人の種田が遺した「ソラニン」が、過去の自分自身との別れの曲であることに気づく。
僕自身が、迷い惑った二十代ももう一年と少し。映画館を出て見上げた初夏の青空は、芽衣子が最後に見た空と同じように、とても広がって見えた。
「ソラニン」
2009年【日】
鑑賞環境:映画館
評価:9点
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