どういう“スタンス”で観るべきなのか、ということが結局掴みきれない映画だった。
南アフリカはヨハネスブルグに現れた巨大な円盤。それに乗り込んでいた数万人のエイリアンが、そのまま「難民」として住着く。
確実に地球人よりも高い科学力を持ち得ながら、異星への難民として劣悪な生活環境に身を落とすエイリアンたちは意味不明。
そして、それを一旦は受け入れておいて、結局「難民」としての強制退去に役所仕事を繰り返す地球人たちは、もっと意味不明だ。
というわけで、基本となるストーリーは、整合しているようでどこまでも常軌を逸している。
その“普通じゃなさ”は、真面目な語り口になればなるほど破綻し、それこそがこの映画が狙ったシュールなユニークさだと思う。
真っ当なB級映画として捉えるのならば、とてもクオリティーの高い愛すべき映画となったかもしれない。
ただ問題は、今作がアカデミー作品賞にノミネートされていることだ。
「エビ」と揶揄されるエイリアンたちを差別の対象として描くことで、現実社会における問題提起をしている部分は確かにあるのだろうが、そこにアカデミー賞にノミネートされるほどの映画としての深みがあるかというと、そんなことは決してない。
これは、奇妙な設定を奇妙なストーリーテリングで綴った悪趣味な悪ノリ映画であり、そういう風にプロモーションすることこそ、この映画の価値を正しく伝える唯一の方法だったと思う。
アカデミー賞という変な固定概念が付いてしまったせいで、「ふざけた映画だ」という印象のみが殊更に強まってしまった。
「第9地区 DISTRICT 9」
2009年【米・ニュージーランド】
鑑賞環境:映画館
評価:4点
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