「狼男?今更?」
という第一印象を持ち、その今更感たっぷりの作品に、ベニ・チオ・デルトロとアンソニー・ホプキンスの濃ゆ過ぎるキャスティングの意味と価値は何なのか?という疑問を持った。
そんな疑問符だらけの印象だったので、映画館で観るつもりはなかった。
しかし、所用で早起きした日曜日の午前中、ぽっかりと空いた時間に映画館に行くと、観たかったアカデミー賞絡みの作品はことごとく午後からの上映スケジュールとなっていて、唯一時間が合ったのが今作だった。
「まあ、これも巡り合わせか」と思い、諦めて鑑賞に至った。
(ただし、その反面「もしかすると……」という淡い期待が無かったわけではない)
映画は、予定調和に終始した。
薄暗いオールドイングランド、妖しく荒れ果てた大屋敷、尊大で謎を秘めた領主、満月の夜の惨劇、闇夜を疾走する怪物、主人公に訪れる悲劇…………。
ベニ・チオ・デルトロの疑心暗鬼な表情から、アンソニー・ホプキンスの溢れる異常性まで、すべてがいわゆる“お約束”の中で展開される。
そのベタベタな展開に対して冒頭は呆れる。しかし、次第にその展開の性質は、突き詰められた「王道」に対する美学へと転じていく。
用意されたストーリー自体には衝撃性はまったく無いと言っていい。ただ恐怖シーンでは約束通りに恐怖感が煽り立てられ、感情が揺さぶられる。
つまりは、観ている者の恐怖感や驚きまでもが、予定調和の中にしっかりと組み込まれているということだと思う。
「狼男」の映画として、「良い意味で裏切られた」なんて思う部分は一切無い。「まさに狼男の映画だ」と言うべき映画だ。
よくよく考えてみれば、「今更狼男?」と思う反面、実際はまともに「狼男映画」なんて観たことがないということに気づいた。
この映画は、「狼男」という大定番のモンスターの本質をしっかりと描き、“ゴシック・ホラー”を見事に蘇らせた意外な程に堅実な良作だと思う。
見所はやっぱり“変身”シーンだろう。
単に毛深くなったり、爪や牙が伸びるといった安直なものではなく、「骨格」が生々しく転じていく様がインパクトがあって良い。タダでさえ濃いデルトロやホプキンスがそうなるので、衝撃は殊更。
ストーリーに驚きがない分、逆に何度も観たくなる。そういう面白味に溢れた作品だ。
監督が誰かと再確認してみれば、「ジュマンジ」「ジュラシックパークⅢ」で“一流”から一線外れた娯楽性を見せてくれたジョー・ジョンストン。なるほど納得。
「ウルフマン THE WOLFMAN」
2010年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:8点
コメント
映画「ウルフマン」この特殊メイク大画面で見るともっと凄い!
「ウルフマン 」★★★☆
ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント主演
ジョー・ジョンストン監督、102分 、
2010年4月24日公開、2009,アメリカ,ファントム・フィルム
(原題:The Wolfman )
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「ドラキュラと同じ様に古典的な怪物映画の主人公が
現代の特殊メイクで蘇った、
主演のベニチオ・デル・トロは人間の時もなんだか怪しい、
そしてアンソニー・ホプキンスは嬉々として演じてるようだった」
19世紀末の英国、
人気俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は、
兄の行方不明の知らせを聞き、
生家のタルボット城へと帰郷する。
そして惨殺された兄の遺体を発見するが、
犯人を探している時に「ウルフマン」に襲われ
噛まれたことで自らも恐ろしい怪物となってしまう。
ここに父のジョン(アンソニー・ホプキンス)が
もちろん絡んでくるわけだけど、
ストーリーの驚きよりは
やはり変身シーンの凄さには目を奪われる。
イギリスの古城がある田園風景も
撮影の仕方でおどろおどろしく、
霧のかかったぼんやりとした光景までが
何か不穏なものを隠しているように見えるから不思議だ。
エミリー・ブラントの硬質で貴族的な顔立ちも
この映画に合っている、
ヴィクトリア女王から洗濯屋まで様々な役を器用にこなし
最近は大活躍の女優さんだ。
でも何故、古くから狼男なんてものを作ったのだろう、
人間の心の中の普通では考えられない
凶悪なことをしてしまう部分を
人間ではない「獣」として捉えたのだろうか、
他人を殺してしまうような行為は
爪を伸ばし、体中に毛をはやして
もう人間ではない「ばけもの」として犯してしまうのだと。
そんなふうに逆説的に
人間らしさに救いを求めるように
この映画もさらに父と子の思惑や葛藤、
断ち切れない「血」という絆など
ストーリーはシンプル
目に見えるメイクの凄さもさることながら
人間である悲しさみたいな
絶望感さえ伝えている。
とにかく特殊メイクは凄いので
それを見に行くだけでも価値アリの一本。
★100点満点で70点★
soramove
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