自分の生きる“術”として、銀行強盗を続ける男と、その男を追い続ける男。
それぞれの信念を持って自らの人生を全うする二人の姿は、熱く、同時にとても脆い。
その「脆さ」こそ、この映画が描く本質だと思った。
この映画は、二人の男同士の対決を描いているのでもなければ、悪と正義の攻防なんてものを描いているのでもない。
一人一人の男の人生におけるある種の「無様さ」を描いている作品だと思う。
主人公の強盗を演じるジョニー・デップ。それを追跡する捜査官を演じるクリスチャン・ベール。
二人とも円熟期を迎え、人気と実力を兼ね備えた俳優だけに、抜群の存在感と巧さを見せる。
しかし、演じるキャラクターは、それぞれ決して格好良くはない。
自らの運命に葛藤し続け、苦闘し続ける。
そして両者ともが、最良の結果を得られない。
その両者の渦巻く内情こそが、この映画の核心であり、濃密なドラマ性だと思う。
マイケル・マンという監督は、相変わらず男の深い葛藤を描くのが巧い。
「パブリック・エネミーズ PUBLIC ENEMIES」
2009年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:8点
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