内戦渦のスペイン、残酷で悲痛な運命の中に放り込まれた一人の少女、彼女が迷い込んだ幻想的な「迷宮」は、現実か妄想か。
まず自分の想像以上に、痛々しく悲劇的展開が衝撃的だった。
悲劇的な運命の中で主人公の少女がファンタジーの世界に入り込み光を見出していくという展開を想像していたのだが、決してそんな生易しいものではなかった。
どこまでも暗い闇の中で、少女が自分に対する唯一の救いどころとして見出していくもの、それが「幻想」だった。
物語が始まった時点で、少女の精神は崩壊していたのかもしれない。
少女が迷い込んだのは、光に溢れたファンタジー世界ではなく、闇の中の限界の淵で辿り着いた、幻想世界だったのだろう。
戦渦の薄暗い山村とその中で見え隠れする妖しい幻想世界を、独特のビジュアルで描き出した映像美が素晴らしい。
時に痛々し過ぎるほどの描写も、確固たるビジュアルセンスによって作品の中で違和感なく溶け込んでいる。
基本的に「悲劇」は苦手で、出来ることなら見たくない。
だが、残酷な運命に対する少女の人間としてのひたむきさ、そして魅惑的な少女の幻想世界にどんどん引き込まれていった。
「パンズ・ラビリンス El Laberinto del Fauno」
2006年【メキシコ・スペイン・米】
鑑賞環境:7点
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