「ディパーテッド」

2007☆Brand new Movies

 

香港ノワールの大傑作「インファナル・アフェア」を、ハリウッドを代表する映画人たちがそのプライドをかけてどうリメイクしてみせるのか。やはり、この話題作の焦点はそこだったと思う。

スコセッシ監督のドライな映画世界も、ディカプリオの苦悩に溢れた表現力も、ニコルソンの流石の存在感も、この「ディパーテッド」という映画がまったくのオリジナルであれば、もう手放しで評価しても良いクオリティーは随所で見られたと思う。
しかし、これが香港映画のリメイクである以上、オリジナル作品と比べないわけにはいかず、結果として「ディパーテッド」の惨敗、「インファナル・アフェア」がどれだけスバラシイ映画であったかということを改めて知らしめるための作品となってしまったかもしれない。

映画として、ストーリーとしての「美意識」という観念において、今作はオリジナルに対し大きく引けをとってしまっているように感じた。
やはり主にはラストの顛末についてのことになるだろう。アンディ・ラウ(警察に潜入したマフィア)が結局最後まで生き残り、複雑な感情が入り混じる苦渋の表情で締める「インファナル・アフェア」に対し、今作の顛末にはあまりに節操が無く、余韻が残らない。
クライマックスの流れまでほぼオリジナルに沿っているわけだから、最後まで通した方が良かったのではないかと思う。

加えて、キャスティングにも大きな敗因があった。「インファナル・アフェア」は、アンディ・ラウとトニー・レオンというアジア映画界きって二大スターによる完璧なる“W主役”だった。それに対して、この「ディパーテッド」の主人公はやはりディカプリオというしかない。マット・デイモンが悪かったわけではない。彼がひとつの映画の主役を張れるスター俳優であることは間違いない。が、彼の場合は、映画よっちゃ脇役もできるスター俳優なのだ。そうなるとやはり、三度スコセッシ監督とタッグを組んで、アカデミー賞を狙うという話題性と、絶対的なスター性を持つディカプリオの前ではかすんでしまう。
他の映画ならそれでも問題はないだろう。が、今作のストーリー性を考えると、この二人の主人公の“バランス”は絶対にフラットでなければならなかったと思う。(さらにラストで怒涛の如く情けなく朽ちていくキャラクターを与えられたデイモンには同情すら覚える……)

前述しているように、映画としてクオリティの高い箇所はいくつもあるし、面白くない映画では決してない。
ただあらゆる面において、オリジナルである「インファナル・アフェア」の圧勝であることは、否定できない。

「ディパーテッド The Departed」
2006年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:7点

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