「ラストレター」映画レビュー “拝啓、初恋のきみ。お元気ですか?私は歳を取りました。”

ラストレター2020☆Brand new Movies

ラストレター

評価: 9点

Story

裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。 公式サイトより

映画『ラストレター』特報2【2020年1月17日(金)公開】
『Love Letter』『スワロウテイル』岩井俊二監督最新作 いまだ読めずにいる“最後の手紙”に込められた、 初恋の記憶― 日本映画史に残る、珠玉のラブストーリーが誕生する。 -------------- 映画『ラストレター』 2020年1月17日(金)公開 松たか子 広瀬すず 庵野秀明 森七菜 小室等 水越け...

 

Review

遅すぎた邂逅は、それでも何かを癒し、未来を生む。
いびつで、拙く、寓話のように非現実的だけれど、それは僕自身が「Love Letter」から25年来、愛し続けた世界観そのものであり、“優しい嘘”は、あの時と変わらずに心を揺らした。

僕が中学生の頃、「スワロウテイル」を観て、岩井俊二という映画監督の存在を初めて知った。
「映画」というものを自身の趣味として積極的に観始めたばかりの頃で、見識が浅い子供だった僕は、映し出されている映画世界のどこまでが現実で、どこからが非現実なのか、その境界線を判別できなくて、大きな戸惑い共に衝撃を受けた。

無論それは、あの“イェン・タウン”という異世界に対してリアリティを感じたというわけではなく、エキセントリックな「寓話」として映し出された空間に妙な生々しさと、現実世界と地続きの真理めいたものを感じたからだと思う。
以来僕は、二十数年に渡り、この映画監督が生み出す“世界”の虜になり、憧れ続けてきた。

時間は瞬く間に過ぎ去り、中学生の男子は、アラフォーのおじさんになった。

2016年の「リップヴァンウィンクルの花嫁」以来4年ぶりの最新作に対しては、少々気が引けていた部分があった。
「Love Letter」の二番煎じとまでは言わないまでも、何となく懐古的な雰囲気を携えたイントロダクションに懸念を感じていたこともあるが、何よりも僕自身が、“ラブストーリー”というものに対して、とんと縁遠くなってしまっていたことの影響が大きい。

四十路前のおじさんになってしまった自分が、中学生時代から憧れ続けてきた映画監督が新たに生み出したラブストーリーを目の当たりにして、照れずに、素直に受け入れることができるだろうか。そういう「危惧」が無意識下にあったように思う。

でも、そんな危惧や懸念は、序盤の何気ないシークエンスに触れた途端に消え去っていった。
少年少女たちの他愛もない台詞回し、どこか無防備な役者たちの自然体の演技、ただひたすらに美しい映像世界、ファーストカットからの一つ一つに対して、「ああ、岩井俊二の映画だな」とストンと腹に落ちる感覚を覚えた。

松たか子、福山雅治が演じる主人公たちは、奇しくも高校卒業から二十数年を経た“おばさん”、“おじさん”。
この上なくセンチメンタルで、ロマンティックなラブストーリーであることは間違いないけれど、この映画は、まさに「Love Letter」から25年が経った“僕たち”のための作品だった。

二十数年の年月は、劇中の登場人物たちにとっても、現実世界の僕たちにとっても、同じように長く、一口で語れるものではない。
色々なものを失い、色々なものを得るには充分な時間であろう。

過ぎ去った時間のあまりにも眩い「光」を愛するあまりに、逆にその呪縛から抜け出せずにいた売れない小説家の男。
不意に訪れた邂逅により、彼が突き付けられた“現実”はあまりにも厳しく、尽きせぬ悔恨と共に容赦なく「闇」の中に突き落とされる。

けれど、その邂逅は、男を呪縛から解き放ち、「闇」の中から新しい「光」へと導いてもいく。

“幻影”のように美しく光り輝く二人の少女に対峙した彼は、決して取り戻すことができない時間の無情さを痛感したと同時に、悔恨も、贖罪も、悲しみも、感謝も、すべてひっくるめて歩むべき「未来」を見出したのだろう。

“信奉者”としての贔屓目は多分にあろうとは思う。
ただ、岩井俊二の映画作品と共に、僕は僕なりに、二十数年の“紆余曲折”を経てきたわけで。
その上で得られたこの新たな感動を否定することなどできやしない。

 

 

Information

タイトルラストレター Last Letter
製作年2020年
製作国日本
監督岩井俊二
脚本岩井俊二
撮影神戸千木
出演松たか子
福山雅治
広瀬すず
森七菜
神木隆之介
庵野秀明
小室等
水越けいこ
豊川悦司
中山美穂
鑑賞環境映画館
評価9点

 

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画像引用:https://www.bacca.net

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