「ゲド戦記」

2006☆Brand new Movies

 

「ハウルの動く城」には著しく“失望”させられた。本来ひとつの映画と考えるならば、比較すべきではないのかもしれないが、やはりどうしたってひとつの「時代」と「ブランド」を築き上げた“天才”の“息子”の映画であるという固定観念は拭い去れない。
そしてそこには、多大な危惧と疑心と、それでも大きな期待が入り混じる。

結論から言うと、映画作品としては「ハウルの~」よりはよっぽど“面白い”。
まあこのことはある程度予測していた。
冒頭にも述べたように、「ハウル」は物語として破綻しており映画としての完成度が極めて低かった。
でも、だからと言ってこの「ゲド戦記」が、他の宮崎映画の優れた傑作の内どれか一つにでも匹敵するかと言うと、それもない。
要するに、世界的なファンタジーの古典をほどよくまとめて仕上げてはいるが、“かつて”の宮崎映画における爆発的な面白さ、映画としての魅力には到底及んでいないということ。
矛盾しているようだが、映画としての「魅力」という点では、「ハウル~」にも及んでいない気もする。

ストーリー自体の“小ぶり感”と、古典ファンタジーならではの“説教臭さ”の影響もあるが、キャラクターのそれぞれがどこか希薄で魅力がないことが、映画としての魅力のなさに直結しているような気がする。
各々に重い悩みや葛藤は存在するが、核となるべきそれらを解消していく様に対して、感情の抑揚を感じることが出来ずどこか淡々と物語が経過していってしまった。

まあね。なんだかんだ言っても、一人の新人監督の「処女作」としてだけ捉えれば、充分に及第点の出来栄えである。
が、やはり、この宮崎吾朗という人が映画監督、しかもアニメメーカーとしてやっていくつもりなら、「宮崎駿の息子」というレッテルからは永遠に逃れられないだろう。今作にしたって、ジブリの全面的バックアップ、豪華な声優陣、巨大な制作費と広告費の上で“監督”というポジションにいられるのは、彼が“天才の息子”だからである。
酷評は、容易に批判すらできなかった父親の分までふりかかるだろう。
さて今後どういう活動をしていくのか、注目したい。

「ゲド戦記 Tales from Earthsea」
2006年【日】
鑑賞環境:映画館
評価:6点

コメント

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