「日本沈没 (2006)」

2006☆Brand new Movies

 

正直、「観ようか、観まいか」と迷った。
パニック映画好きとしては当然観たいが、日本のいわゆる“超大作映画”には相当に高い確率でイタイ目にあっているからである。主演がアイドル俳優であることも興味を削がれかけた要因だった(草○クンのことが嫌いなわけではないが)。
結局、柴咲コウのことが最近好きなことと、脚本が専門学校時代に習った脚本家の先生によるものだったので、劇場でみるべきだろうということになった。

が、そういう「危惧」は見事に打ち消されたと言っていい。

先述したように、日本の超大作映画というだけで「駄作」と決めつけても、決して行き過ぎではない風潮は確かにあった。
しかし、ここ数年ところどころその通例が覆され始めていることも事実。
昨年で言えば、「ローレライ」や「亡国のイージス」、「男たちの大和」などは、“超大作”という触れ込みに負けないパワフルな良い映画だったと思う。

そしてこの「日本沈没」も、その負のイメージを払拭する見事な大スペクタクル映画に仕上がっている。
1973年のオリジナル版も数年前に観たが、明らかに今作は“現代の映画”としてパワーアップしている。
近年激化する「リメイクブーム」の中でこれほどの成功例も珍しい。(草○クンの演技もギリギリセーフ)

では何がそれほどにスバラシイのか?
端的に言えば「特撮」である。まあ正確に言えば、CGを駆使したVFXであり、それこそオリジナル版「日本沈没」における特撮(SFX)とはもはや一線を画すのだけれど、とにかく良かった。

抜群にその精度が高いというわけではない。もちろん、ハリウッド映画等における世界トップレベルのそれにはまだまだ及んでいない。
でも、この映画の「特撮」には、近年の国内超大“駄”作映画に一様に欠けていた「特撮を効果的に見せよう」とする工夫とセンスがある。
「特撮」とは、ありもしないことをさも現実にあるように見せようとする試みなわけで、詰まるところどんなに高い技術的レベルやふんだんな制作費があろうとも、「工夫」に対する努力がなければ映像としての説得力は生まれない。

秀でたCG力で超絶な映像を作り出せたとしても、それ以前の映像作り自体が手抜きだと、CG自体がチープに見えてくる。が、逆にチープなCGや特撮であっても、そこに辿り着くまでの「見せ方」が巧ければ、効果は倍増するのだ。

顧みれば、そういう映像作りの工夫と努力に対する意識の高さが常にあったからこそ、かつての日本映画界は世界屈指の特撮王国になり得たのだと思う。

そしてこの映画は、「特撮映画」である。実際ストーリーなど二の次で良いのだ。
絶望的に崩壊していく日本列島の様に、確固たる心の揺れを覚えた。涙が溢れてきた。もうそれだけで、この映画の価値は高い。

僕は思う。日本映画の「特撮」はようやく「感動」を紡ぎ出すことの出来るレベルに達した。
いや、“戻った”と言うべきか。

「日本沈没」
2006年【日】
鑑賞環境:映画館
評価:9点

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