正直なところ、アメリカ史上に残る問題性を秘めた“事件”である「赤狩り」について詳しくないので、この映画の詳細的な部分を理解するのにはいささか戸惑った。しかし、強大な権力の弾圧に対し、毅然と立ち向かったエド・マロー、その“ジャーナリスト魂”に奮える。
「言葉の強さ」なんてもはや言いふらされたことではるが、改めて感じる。人間が持つことを許された唯一にして最大の武器は、剣でも、銃でも、爆弾でもなく、“発言”とその“勇気”だ。
世界中に“自由”を謳う大国アメリカは、その体裁の反面、様々な部分でゆがみ、闇にまみれている。世界中の多くの人たちがこの国を憎み、疎んでいることは事実だろう。だが、同時にこの国ほど世界中に愛され、憧れられている国がないこともまた事実。その理由は、いつの時代においても、どれほど“愚かさ”による膜に包まれようとも、、絶えずエド・マローのような人間が“自由”のもとにそれを突き破ってきたからに他ならない。
「グッドナイト、そしてグッドラック」
稀代のジャーナリストは、中継終了時に表情を崩さないまま必ずそう言う。そこには、自らが生きる国を愛し、だからこそ怒り続けた一人の男の、心からの願いと憂いが溢れている。
「グッドナイト&グッドラック Good Night,and Good Luck.」
2006年【米・仏・英・日】
評価:8点
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