この映画で描かれるものは、人間の歴史をそのまま形どっていると言って過言ではない長く果てしない「憎しみの螺旋」の“一端”だ。
当然ながら、そこには“正義”も“悪”もない。あるのは、ただ“報復”の繰り返し。
だからこそ、そこに関わるすべての人間たちは、次第に成し遂げるべき目的さえ見失い、だた悲しみ、苦しむ。
その先に何があるのかなんて、本当は誰も何も分かっていないのだと思う。でも、本能的に自分たちが“存在”する場所を求め、盲目的に憎しみ合ってしまう。
悲しいけれど、それは本当に終わりの無い“螺旋”なのかもしれない。
たぶん、“祖国”に対する喪失感や虚無感なんて味わったことがない僕には、この映画が物語る本当の“感情”なんて分かるはずがないのだろう。
でもだからこそ、映画として冷静に観ることができると思う。
本当に深い問題というものは、それぞれの感情が入るほどに、果てしなく広がり続ける。ならばそこには、もっと幅広い世界的な認知と、冷静な視線が必要なのではないか。
あらためて、遠い他国の紛争は、決して自分たちに無関係ではないということを感じる。
この重く濃厚なテーマ性を持つ物語を、その長尺をまったく感じさせないテンポと映像的な重厚さで見せつけるスピルバーグの映画術は流石だった。
ラストカット、はるかに見える今は無き貿易センタービルがなんとも感慨深い。
“螺旋”は今この瞬間も確実に続いている。
トリノ五輪の開幕に合わせて公開されたこの映画に対し、世界は何を感じるだろう?
「ミュンヘン Munich」
2005年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:9点
コメント
ミュンヘン
凄い映画だ。「プライベート・ライアン」の最初のノルマンディー上陸のシーンを、
「オーシャンズ11」で少しだけ薄めたような映画である。これほど衝撃的な映画は、なかなかない。
公開が待ち遠しいと感じるような作品が中々見つからない昨今なのですが、わが家の相方が珍しく観てみたいと言うので「ミュンヘン」を鑑賞してきました。映画館に足を運ぶのは久しぶりの事だったので非常に新鮮な興奮を味わって来ました。やはりシアターでの映画鑑賞は格別…
公開が待ち遠しいと感じるような作品が中々見つからない昨今なのですが、わが家の相方が珍しく観てみたいと言うので「ミュンヘン」を鑑賞してきました。映画館に足を運ぶのは久しぶりの事だったので非常に新鮮な興奮を味わって来ました。やはりシアターでの映画鑑賞は格別…