雷神様の髪型同様に“イメチェン”が決まった映画だ。
シリーズ3作目にして、主要キャラクターたちは殆ど変わらないまま、こんなにもテイストを変えてきた映画もあまりない。
しかも、マーベル・シネマティック・ユニバースという大河の流れの中で、本流のクライマックスへのブリッジの役割もしっかりと果たしながら、アバンギャルドなイメージチェンジを成し得た“はなれわざ”は賞賛に値する。
冒頭の“鎖ジョーク”から、ドクター・ストレンジやハルクとの絡みなど、全編通して前2作とはまったくテイストの異なる切れたジョークが満載だ。
特に悪しき愛しき弟ロキが登場する場面は、全シーンが楽しい。
ただし、結果としてソーに与えられた試練と運命はあまりに重い。
「アスガルドとは場所ではなく民だ」とはいえ、ウォリアーズ・スリーをはじめとする戦士たちはあっさりと惨殺され、ハンマーを失い、髪を失い、片目を失い、故郷の地は木っ端微塵に崩壊した。
更に、「インフィニティ・ウォー」鑑賞後の今となっては、この映画の直後に我らが脳筋ヒーローが遭遇する悲劇はあまりにも非道だ。
それもこれも、すべては父オーディンの負の遺産のせいなわけで、自らが元凶の災いばかりを残して、あっさりと黄泉の国へ消え去ってしまう後の濁し方が、あまりに無責任に思えてならなかった。
まあしかし、元来「神」とはそういうものなのかもしれない。
全知全能の神というものがもし本当に存在したとして、それでもこの実世界が、こんなにも不幸や苦悩にまみれているというのならば、やはりあまりに「無責任」だ。
「死」をも裏切るロキの何度目かの裏切りに期待しつつ、「エンドゲーム」に臨もう。
「マイティ・ソー バトルロイヤル THOR: RAGNAROK」
2017年【米】
鑑賞環境:BS(字幕)
評価:8点
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