「マシニスト」

人間、“1年間眠ることができない”なんてことは起こりうることではなく、そんな人間の状態なんて想像しがたいものだが、この映画の主人公の姿を目にすれば、「ああこうなるんだ」ということを疑わないだろう。

それほどに、主演俳優クリスチャン・ベールのゲキ痩せっぷりが尋常でない。ファーストカットから、「大丈夫なのか？」と俳優に対する現実的な不安が湧き出る。
この映画の後に出演した「バットマン　ビギンズ」でのクリスチャン・ベールの筋骨隆々な肉体と比較すれば、その衝撃はさらに飛躍するだろう。凄い。
ベールの破滅的とも言える役者魂を観るだけでも、この映画は価値がある。

近年、同じようなアイデアのサスペンスが量産されつつあるので、ストーリーの表面のみをなぞれば、それほどの目新しさはないのかもしれない。
でも、厳密に捉えれば、この映画には確固たるオリジナリティがあるし、その設定と展開には満足し得ると思う。

映像感覚も素晴らしく、1カット1カットに目を見張らせる映画構成は、今作が、完成された質の高い映画であることを表している。

とにかく、クリスチャン・ベールの主演映画には今後も注目である。

「マシニスト　The Machinist」
2004年【米・スペイン】
鑑賞環境：DVD
評価：7点