「恋に落ちる確率」

2005☆Brand new Movies

 

映画という文化は常に新しい感覚を求め続けるものだ。
そして、この遠い北の国で生まれた新鋭監督の処女作は、とても変てこで、新しい映画だと思う。

主人公の男が迷い込む不思議でとめどない世界。
果たして、この映画世界が描くものの正体は何なのだろう?
登場人物の一人である恋愛小説家が描いてく架空の世界なのか。新たな愛の迷宮でさまよう男の混乱した精神世界なのか。

実際それが何なのかは、明確にはならない。
でも、それでいいのだと思う。この映画は、描かれるものの明確さを求めるものではない。
観る者のそれぞれが、それぞれの愛についての感情を持てれば、それでいいのだ。

とてもとても変てこな映画だ。映画の主人公そのままに、間違いなく観ている側も“不思議な世界”へ引き込まれる。
この映画世界は何なのか?主人公の男の混乱した精神世界なのか?劇中の小説家が描く愛についての物語の世界へ入り込んでしまったのか?たぶん、明確な説明などは必要でないのだと思う。

この映画の作り手が望んでいるのは、そういうことではないと思う。

観客のそれぞれが、それぞれの“捉え方”をし、それぞれの結末に対する感情を持つべきなのだろう。
きっと、観終わった直後では、自身の中においても感情としての答えは定まらない。でも今はそれでいいのではないかと思う。

遠い、北の国でつくられたこの映画は、ただ単に冷たいだけではない冷ややかな体温をしっとりと観る者に残す。

「恋に落ちる確率 Reconstruction」
2003年【デンマーク】
鑑賞環境:DVD
評価:7点

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